外国人を雇うとき、会社が最初に確認するのは、その人の在留資格で予定の仕事ができるかどうかです。在留カードを見て、在留資格・在留期間・就労制限の有無・資格外活動許可を確かめます。確認を怠って不法就労をさせると、知らなかったとしても過失があれば会社側も処罰されます(出入国管理及び難民認定法73条の2)。雇い入れたときと離職したときはハローワークへの届出が必要で(労働施策総合推進法28条1項)、労働基準法や社会保険の法律は国籍にかかわらず適用されます。
こんな場面で問題になります
- 留学生のアルバイトを、卒業後もそのまま正社員として雇いたい。
- 海外のグループ会社から来た社員を、日本法人で別の部署の仕事に就かせたい。
- 中途採用の応募者が外国籍で、在留カードのどこを見ればよいか分からない。
- 外国人の社員が退職したが、ハローワークへの届出をしたかどうか分からない。
採用の前に:在留カードで「その仕事ができるか」を確認する
在留資格ごとに、できる仕事が決まっている
日本に在留する外国人は、在留資格(日本で行える活動や身分を示す資格)をもって在留します(出入国管理及び難民認定法2条の2第1項。以下「入管法」)。「技術・人文知識・国際業務」など入管法別表第一の在留資格の人は、その資格で認められた活動以外の、報酬を受ける活動などをしてはいけません(入管法19条1項)。例外は、出入国在留管理庁長官から資格外活動の許可を受けた場合です(同条2項)。
一方、永住者・定住者など入管法別表第二の在留資格の人は、身分や地位に基づいて在留しています。厚生労働省の指針は、こうした人は活動内容に制限がないことに留意するよう求めています。
厚生労働省の指針は、採用にあたって、採用後に従事する業務が在留資格上認められるかを、あらかじめ確認するよう定めています。認められない人は採用してはならないとしています。
在留カードのどこを見るか
在留カードは、3か月以下の在留期間の人や短期滞在の人などを除く、中長期在留者に交付されます(入管法19条の3)。在留カードには、在留資格と在留期間の満了日、就労制限の有無、資格外活動許可を受けているときはその旨が記載されます(入管法19条の4第1項3号・5号・6号)。
出入国在留管理庁の事業主向け資料は、次の順で確認するよう案内しています。
- 表面の「就労制限の有無」欄:「就労不可」なら原則として雇えません。「在留資格に基づく就労活動のみ可」などの一部制限があれば、その内容を確認します。「就労制限なし」なら就労内容に制限はありません。
- 裏面の「資格外活動許可欄」:「就労不可」などの人でも、許可の記載があれば、時間や内容の範囲内で働けます。例えば「原則週28時間以内」で、複数のアルバイト先があれば合計で週28時間以内です。
- 指定書:「特定活動」や「特定技能」では、法務大臣が個々に指定した活動を記載した指定書も確認します。
同じ資料は、「留学」「研修」「家族滞在」「文化活動」「短期滞在」の人は、資格外活動許可を受けていなければ働けないと注意しています。
偽造の在留カードに注意する
出入国在留管理庁は、在留カード等読取アプリケーションと、在留カード等番号の失効情報照会を併せて使うよう勧めています。ただし、失効していないという照会結果は、在留カードの有効性を証明するものではないとしています。偽変造が疑われるときは、最寄りの地方出入国在留管理官署に相談します。
実務では、内定を出す前に在留カードの両面を確認し、予定の業務内容と在留資格を照らし合わせます。留学生を卒業後に正社員にする場合のように、仕事に合わせて在留資格の変更が必要になることもあります。
不法就労助長罪:「知らなかった」で済まない場合
事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者は、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処され、又は併科されます(入管法73条の2第1項1号)。不法就労をさせるために外国人を自己の支配下に置いた者や、業として不法就労をあっせんした者も同じです(同項2号・3号)。
注意したいのは、知らなかったことを理由に処罰を免れることができない点です。次の事情を知らなかったとしても処罰を免れず、免れるのは過失がないときだけです(同条2項)。
- その仕事が、在留資格に応じた活動に属しない報酬を受ける活動であること
- 資格外活動の許可を受けていないこと
- 不法滞在者など、入管法70条1項の一定の号に当たる人であること
出入国在留管理庁の資料は、不法就労者であることを知らなかったとしても、在留カードを確認していないなどの過失があれば処罰を免れないとしています。会社の従業者が業務に関してこの罪を犯したときは、行為者のほか、会社にも罰金刑が科されます(入管法76条の2)。
罰則は引き上げが決まっています。2027年4月1日からは、5年以下の拘禁刑若しくは500万円以下の罰金(又は併科)になります(令和6年法律第60号による改正後の入管法73条の2第1項)。
雇入れと離職をハローワークに届け出る
すべての事業主に届出の義務がある
事業主は、外国人を新たに雇い入れたときと、雇用する外国人が離職したときは、氏名・在留資格・在留期間などを確認し、厚生労働大臣に届け出なければなりません(労働施策総合推進法28条1項)。届出先は事業所を管轄するハローワークです。厚生労働省によると、対象は「外交」「公用」の在留資格の人と特別永住者を除く外国人労働者で、全ての事業主が届け出る必要があります。
届け出る事項は、雇用保険の被保険者かどうかで異なります。被保険者でない人については、氏名・在留資格・在留期間・生年月日・性別・国籍・地域です。中長期在留者については、在留カードの番号も届け出ます(厚生労働省の指針)。
届出の期限
厚生労働省は、届出の期限を次のとおり案内しています。
- 雇用保険の被保険者になる人:雇用保険の資格取得届・資格喪失届を出すことで届出をしたことになります。期限は、雇入れは翌月10日まで、離職は離職の翌日から起算して10日以内です。
- 雇用保険の被保険者にならない人:外国人雇用状況届出書(様式第3号)を出します。期限は、雇入れ・離職とも翌月末日までです。
届出をしなかったり、虚偽の届出をしたりすると、30万円以下の罰金の対象です(労働施策総合推進法50条1項2号)。会社の従業者が違反したときは、会社にも罰金刑が科されます(同条2項)。
確認の方法と範囲
厚生労働省は、届出の際は在留カードや旅券の提示を求めて届け出る事項を確認するよう求めています。在留カードの写しを届出に添付する必要はありません。
確認が求められるのは、通常の注意力で外国人と判断できる場合です(厚生労働省の指針)。氏名や言語などから外国人であることが一般的に明らかな場合をいい、特別な調査は求められていません。指針は、届出事項以外の確認や届出は必要なく、プライバシーの保護にも十分留意するよう求めています。
出入国在留管理庁への届出との関係
入管法には、中長期在留者を受け入れている機関が、受入れの開始・終了などを出入国在留管理庁長官に届け出るよう努める規定があります(入管法19条の17)。ただし、労働施策総合推進法28条1項の届出をしなければならない事業主と、特定技能所属機関は、この規定の対象から除かれています。外国人を雇用する会社の場合、ハローワークへの届出が中心になります。
特定技能の外国人を雇う会社(特定技能所属機関)は、雇用契約の変更・終了などがあったとき、出入国在留管理庁長官に届け出なければなりません(入管法19条の18第1項)。
また、一定の在留資格の外国人本人には、所属する機関の変更などがあった日から14日以内に、出入国在留管理庁長官に届け出る義務があります(入管法19条の16)。出入国在留管理庁は、事業主から本人にこの届出を案内するよう呼びかけています。
労働法と社会保険は、国籍にかかわらず適用される
使用者は、労働者の国籍を理由として、賃金・労働時間その他の労働条件について差別的取扱いをしてはなりません(労働基準法3条)。
厚生労働省の指針は、労働者の国籍にかかわらず、労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法・労働契約法・雇用保険法・健康保険法・厚生年金保険法などの労働関係法令と社会保険関係法令が適用されるとしています。そのうえで、事業主に次のことを求めています。
- 最低賃金額以上の賃金を支払い、賃金は法令や労使協定で定めがある場合を除き全額を支払うこと
- 被保険者に当たる外国人労働者について、労働・社会保険の適用手続をとること
- 労働・社会保険の内容や給付の請求手続を、外国人労働者が理解できる方法で周知するよう努めること
「外国人だから日本人と別の賃金体系にする」「本人が希望しないので社会保険に入れない」といった運用は、これらの法令に照らして見直しが必要です。
労働条件は書面で、本人が理解できる方法で示す
使用者は、労働契約を結ぶとき、賃金・労働時間その他の労働条件を明示しなければなりません(労働基準法15条1項)。次の事項は、書面の交付で明示します(同法施行規則5条3項・4項)。労働者が希望すれば、ファクシミリや電子メール等の送信でも明示できます。
- 契約期間と、有期契約を更新する場合の基準
- 就業の場所と従事する業務(変更の範囲を含む)
- 始業・終業の時刻、所定時間外労働の有無、休憩、休日、休暇
- 賃金の決定・計算・支払の方法、締切りと支払の時期
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
明示された労働条件が事実と違う場合、労働者は即時に労働契約を解除できます(労働基準法15条2項)。
厚生労働省の指針は、外国人労働者には、母国語その他の本人が使う言語や平易な日本語を用いるなど、本人が理解できる方法で明示するよう努めることを求めています。賃金については、税金・雇用保険や社会保険の保険料・労使協定に基づく控除も説明し、実際の支給額が分かるようにするよう努めることとしています。
労働条件通知書の「従事する業務」は、在留資格で認められる活動と一致させます。仕事の内容が在留資格に合っているかの確認と、労働条件の明示は、同じ書類の上で行うと漏れが減ります。
雇ったあとに気をつけること
在留期間の満了日を管理する
在留期間は在留資格ごとに定められ、在留カードに満了日が記載されます(入管法2条の2第3項、19条の4第1項3号)。満了日を社内で管理し、更新の手続が間に合うよう本人に早めに声をかけます。
雇用労務責任者を選ぶ
厚生労働省の指針は、外国人労働者を常時10人以上雇用するときは、人事課長などを雇用労務責任者(外国人労働者の雇用管理に関する責任者)として選任するよう定めています。
離職・解雇のとき
外国人の社員が離職したときも、ハローワークへの届出が必要です(労働施策総合推進法28条1項)。解雇には、日本人の社員と同じく客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。厚生労働省の指針も、外国人労働者に安易な解雇を行わないよう求めています。
解雇(本人の責めに帰すべき理由によるものを除く)などで離職する外国人が再就職を希望するときは、事業主は再就職の援助に努めなければなりません(労働施策総合推進法7条)。解雇の手順は「日本で社員を解雇するとき」で解説しています。
外国企業の日本法人の労務や英語でのご相談は「国際・渉外法務」をご覧ください。
今すぐできること
- 外国人の社員と内定者の在留カードを、表面の「就労制限の有無」と裏面の「資格外活動許可欄」まで確認する。
- 各人の在留資格と、実際に担当している業務を一覧にして照らし合わせる。
- 在留期間の満了日を一覧にし、更新の時期を本人と共有する。
- 雇入れ・離職のたびに、ハローワークへの届出が期限内に出ているかを確認する。
- 労働条件通知書を、業務内容・賃金の控除まで含めて、本人が理解できる言語で説明しているか見直す。
- 雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入手続が、国籍に関係なく行われているか確認する。
弁護士に相談すべきタイミング
- 採用予定の業務が、応募者の在留資格で認められるか判断がつかない。
- 雇用中の社員が、在留資格で認められない業務をしていた可能性に気づいた。
- 偽造が疑われる在留カードを提示された。
- 外国人の社員の解雇や雇止めを検討している。
- 海外本社から、日本法人での外国人の雇い方について説明を求められている。
当事務所は、外国人を雇用する会社や外国企業の日本法人の労務・企業法務について、日本語と英語でご相談をお受けしています。お問い合わせページからご連絡ください。
FREE CONSULTATION
労働問題のご相談は、初回30分無料です
- ・日本・ニューヨーク州の弁護士 阿部祐介が担当します
- ・オンライン(Zoom等)・来所(東京・大手町)どちらも可
- ・日本語・英語のどちらでもご相談いただけます
よくあるご質問
外国人のアルバイトを雇うときも、ハローワークへの届出は必要ですか?
必要です。外国人を雇い入れた事業主は、雇用の形態にかかわらず届出をします(労働施策総合推進法28条1項)。雇用保険の被保険者にならない人は、外国人雇用状況届出書(様式第3号)を雇入れの翌月末日までに出します(厚生労働省)。
在留カードに「就労不可」とあれば、雇うことはできませんか?
原則として雇えません。ただし、裏面の資格外活動許可欄に許可の記載があれば、その範囲内で働けます(入管法19条2項、出入国在留管理庁の資料)。例えば「原則週28時間以内」の許可なら、ほかのアルバイト先との合計で週28時間以内です。
在留カードの確認を怠ると、会社はどうなりますか?
不法就労をさせた場合、在留資格の範囲外であることを知らなかったことを理由に処罰を免れることはできず、免れるのは過失がないときだけです(入管法73条の2第2項)。出入国在留管理庁は、在留カードを確認していないなどの過失があれば処罰を免れないとしています。会社にも罰金刑が科されます(入管法76条の2)。
外国人の社員にも社会保険や最低賃金は適用されますか?
適用されます。厚生労働省の指針は、国籍にかかわらず最低賃金法・健康保険法・厚生年金保険法などが適用されるとしています。国籍を理由とする労働条件の差別的取扱いも禁止されています(労働基準法3条)。
労働条件通知書は英語や母国語で作る必要がありますか?
労働基準法は、主な労働条件を書面で明示することを求めています(労働基準法15条1項、同法施行規則5条)。厚生労働省の指針は、母国語や平易な日本語など、本人が理解できる方法での明示に努めるよう求めています。言語の指定ではなく、本人が理解できることが目安です。

