労働問題弁護士監修済

Q.会社が給料を払ってくれません。どうすればよいですか?

A.

給料の未払いは労働基準法違反です。書面で請求し、払われなければ労働基準監督署への申告や労働審判を検討します。時効は当分の間3年です。

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給料が支払われないときは、まず未払いの額と支払日を書面で確かめ、会社に書面で請求します。それでも払われなければ、労働基準監督署への申告、労働審判、訴訟という順に進めるのが一般的です。賃金を期日に全額払わないことは労働基準法24条違反で、30万円以下の罰金の対象です(労働基準法120条1号)。未払いの賃金は、当分の間、支払日から3年で時効にかかるため(労働基準法115条・附則143条3項)、早めに動くことが大切です。 こんな場面で問題になります ・給与の支払日を過ぎても入金がなく、会社から説明もない。 ・退職した元社員から、最後の月の給与と未払い分を請求する書面が届いた。 ・資金繰りが厳しく、今月の給与を全額払えるか分からない。 ・「研修期間だから」「ノルマ未達だから」として給与の一部を差し引いて払っている。 1. 会社が守らなければならない賃金支払いのルール 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければなりません(労働基準法24条1項)。また、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払う必要があります(同条2項)。これを「賃金支払いの5原則」と呼ぶことがあります。 「全額払い」の原則があるため、会社が一方的に給与から差し引くことはできません。差し引けるのは、税金や社会保険料のように法令に定めがある場合と、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は過半数代表者)との書面による協定がある場合に限られます(同条1項ただし書)。「ノルマ未達のペナルティ」「備品を壊した弁償」などを、協定もなく給与から天引きすることは、この原則に反するおそれがあります。 退職や死亡の場合は、本人や遺族などの権利者から請求があれば、会社は7日以内に賃金を支払わなければなりません(労働基準法23条1項)。金額に争いがあっても、異議のない部分はこの期間内に支払う必要があります(同条2項)。 これらに違反した会社は、30万円以下の罰金に処せられることがあります(労働基準法120条1号)。 2. 未払いがあったときの手順 未払いを解決する手段は、話し合いから裁判まで段階があります。一般的には、次の順番で進めます。 ・会社への書面による請求:未払いの期間・金額・根拠を示して支払いを求めます。内容証明郵便を使うと、いつ、どのような内容を請求したかが記録に残ります。 ・労働基準監督署への申告:労働基準法に違反する事実があるときは、労働者は労働基準監督署に申告できます(労働基準法104条1項)。監督署は調査を行い、違反があれば是正を指導します。会社は、申告したことを理由に解雇などの不利益な扱いをしてはなりません(同条2項)。 ・労働審判:裁判所で、裁判官と労働関係の専門家で構成する労働審判委員会が審理する手続です(労働審判法1条)。特別の事情がない限り、3回以内の期日で審理を終えるとされています(同法15条2項)。 ・訴訟:労働審判で解決しない場合や、最初から判決を求める場合に使います。 請求額が60万円以下であれば、簡易裁判所の「少額訴訟」を利用することもできます(民事訴訟法368条1項)。ただし、同じ簡易裁判所で1年に利用できる回数には上限があります(同項ただし書)。少額訴訟の判決に対しては控訴できない点にも注意が必要です(同法377条)。 どの手続を選ぶかは、未払いの額、証拠がどの程度そろっているか、会社との関係を続けたいかによって変わります。たとえば、在職中で関係を壊したくない場合と、すでに退職して金額に大きな争いがある場合とでは、適した手続が異なります。 労働審判の結果に不服がある当事者は、審判書の送達または告知から2週間以内に異議を申し立てることができます(労働審判法21条1項)。適法な異議があると労働審判は効力を失い、申立ての時に訴えの提起があったものとみなされます(同法21条3項・22条1項)。異議がなければ、労働審判は裁判上の和解と同じ効力を持ちます(同法21条4項)。 3. 遅延損害金と遅延利息 支払いが遅れた賃金には、遅延損害金がかかります。金銭の支払いが遅れたときの損害賠償の額は、遅れた最初の時点の法定利率で計算します(民法419条1項)。法定利率は年3%で、3年ごとに見直される仕組みです(民法404条2項・3項)。法務省によれば、2026年4月1日から2029年3月31日までの法定利率も年3%です。 退職した労働者の賃金については、特別なルールがあります。会社が退職日(退職日の後に支払期日が来る賃金はその支払期日)までに賃金を払わなかった場合、退職日(退職日の後に支払期日が来る賃金はその支払期日)の翌日から支払う日までの期間について、年14.6%の遅延利息を支払わなければなりません(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項、同法施行令1条)。対象から退職手当は除かれます。天災地変など、やむを得ない事由による遅れは、その期間について適用されません(同法6条2項)。 4. 「付加金」がつくのはどんな場合か 裁判所は、一定の未払いについて、未払金と同じ額の「付加金」の支払いを会社に命じることができます(労働基準法114条)。ただし、対象は次の4つに限られます。 ・解雇予告手当(労働基準法20条) ・休業手当(同法26条) ・時間外・休日・深夜の割増賃金(同法37条) ・年次有給休暇の期間の賃金(同法39条9項) 通常の月給や日給そのものの未払いは、付加金の対象ではありません。付加金の請求は、違反があった時から、当分の間3年以内にしなければなりません(同法114条ただし書・附則143条2項)。 5. 時効に注意する 労働基準法上の賃金の請求権は、本則では5年で時効にかかると定められています(労働基準法115条)。ただし、当分の間は、退職手当を除く賃金については3年とされています(同法附則143条3項)。退職手当は5年です。 時効は支払日ごとに進みます。古い月の給与から順に時効にかかっていくため、未払いに気づいたら早めに請求することが大切です。 6. 会社が倒産した場合の立替払制度 会社が破産手続開始の決定を受けた場合などには、国が未払賃金の一部を会社に代わって支払う「未払賃金立替払制度」があります(賃金の支払の確保等に関する法律7条)。対象となる事由には、破産のほか、特別清算・民事再生・会社更生の開始と、中小企業が事実上の倒産状態にあると労働基準監督署長が認定した場合が含まれます(同法施行令2条1項)。 立替払の対象となるのは、破産手続開始等の申立て(または認定の申請)の日の6か月前の日から2年の間に退職した労働者です(同法施行令3条)。立替払の額は、未払賃金総額の80%です。未払賃金総額には、退職日の年齢に応じて、30歳未満は110万円、30歳以上45歳未満は220万円、45歳以上は370万円という上限があります(同法施行令4条1項)。 7. 会社側が気をつけたいこと 資金繰りが厳しいときでも、賃金の支払いは後回しにできません。分割払いや支払日の変更を一方的に決めると、賃金の全額払い・定期払いの原則に反するおそれがあります(労働基準法24条)。退職者に対しては年14.6%の遅延利息がかかる点にも注意が必要です。 未払いを求める書面が届いたときは、無視せずに、勤怠記録・賃金台帳・雇用契約書・就業規則を確認し、払うべき額を整理することが出発点です。金額に争いがあっても、争いのない部分を先に支払うことが求められる場面があります(労働基準法23条2項)。 今すぐできること ・雇用契約書、労働条件通知書、就業規則(賃金規程)で、賃金の額と支払日を確認する。 ・給与明細と預金通帳の入金記録を並べ、いつの、いくらが未払いかを一覧にする。 ・タイムカード、業務日報、メールの送信時刻など、働いた時間が分かる記録を保存する。 ・会社への請求は、口頭ではなく書面(メールや内容証明郵便)で行い、控えを残す。 ・最も古い未払い分の支払日から3年が近づいていないかを確認する。 ・会社側の場合は、賃金台帳と勤怠記録を照合し、控除の根拠(法令または労使協定)があるかを確認する。 弁護士に相談すべきタイミング ・会社に書面で請求しても、回答がない、または支払いを拒まれた。 ・未払いの額が大きい、または期間が長く、時効が近づいている。 ・残業代や解雇予告手当など、付加金が問題になる未払いも含まれている。 ・会社の経営状況が悪く、倒産や事業停止の可能性がある。 ・会社側として、退職者や従業員の代理人から請求書や労働審判の申立書が届いた。 よくあるご質問 Q. 退職した後でも、未払いの給料を請求できますか? 請求できます。退職手当を除く賃金は、当分の間、支払日から3年で時効にかかります(労働基準法115条・附則143条3項)。退職者の賃金には、退職日(退職後に支払期日が来る賃金は支払期日)の翌日から年14.6%の遅延利息がつきます(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項)。 Q. 労働基準監督署に申告したことを理由に、会社から不利益な扱いを受けませんか? 会社は、申告をしたことを理由に、解雇その他の不利益な取扱いをしてはならないと定められています(労働基準法104条2項)。 Q. 給料の未払いに「付加金」はつきますか? 通常の月給や日給そのものの未払いには、付加金はつきません。付加金の対象は、解雇予告手当、休業手当、割増賃金、年次有給休暇中の賃金に限られます(労働基準法114条)。 Q. 会社が倒産したら、給料は戻ってきませんか? 破産などの場合には、国の未払賃金立替払制度で、未払賃金総額の80%(年齢に応じた上限あり)が支払われる可能性があります(賃金の支払の確保等に関する法律7条、同法施行令4条)。 Q. 遅延損害金の利率はいくらですか? 在職中の賃金については法定利率の年3%です(民法404条・419条)。退職した労働者の賃金(退職手当を除く)については、退職日(退職後に支払期日が来る賃金は支払期日)の翌日から年14.6%です(賃金の支払の確保等に関する法律6条1項、同法施行令1条)。
※ 本記事は法律の一般的な知識を提供するものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な法的問題については、弁護士にご相談ください。

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