労働問題の全記事を見る最終更新: 2026-03-30

副業・兼業の労働法|就業規則の制限・社会保険・競業避止義務

この記事のポイント

  • 就業規則の副業禁止条項は合理的理由のない場合は無効とされる傾向。厚労省2020年ガイドラインは副業・兼業を原則容認
  • 副業先でも一定要件を満たせば社会保険に加入義務が生じ、二重加入・保険料の按分が必要になる
  • 競業避止義務は退職後も有効な場合があるが、合理的範囲(期間・地域・業種・代償措置)を超えると無効

副業・兼業をめぐる法的状況

日本では従来、多くの企業が就業規則で副業・兼業を禁止または許可制としてきました。しかし2020年以降、政府の方針転換により副業・兼業が推進されるようになっています。

就業規則の副業禁止条項の有効性

原則: 職業選択の自由(憲法22条)

労働者には職業選択の自由があり、企業は労働時間外の活動を原則として制限できません。

就業規則で禁止できる例外(合理的理由が必要)

判例(東京地判昭和61年3月13日マンナ運輸事件等)は、以下の場合に副業禁止が有効とします。

禁止が有効な場合具体例
労務の提供に支障が生じる長時間の副業で本業の業務に影響が出る
競業関係競合他社での就業
企業の信用・秘密情報の毀損企業イメージを傷つける副業
情報漏洩リスク機密情報が漏洩するリスクがある副業

合理的理由のない一律禁止は無効とされる傾向があります。

厚生労働省2020年改正ガイドライン

厚生労働省は2020年に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改訂し、副業・兼業を原則認める方向を示しました。

ガイドラインのポイント: - 副業禁止・制限には合理的な理由が必要 - 副業・兼業の許可制を設ける場合も、申請・承認の基準を明確化すべき - モデル就業規則も副業・兼業を原則容認する形に改訂済み

労働時間の通算管理(労働基準法38条)

通算の原則

複数の会社に勤務する場合、各社での労働時間は通算されます(労働基準法38条1項)

複数社の合計労働時間が法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えると、時間外労働となり割増賃金が発生します。

通算の実務

項目内容
通算の起点先に雇用契約を締結した会社が通算の起点
割増賃金の負担後から雇用した会社(副業先)が割増賃金を負担
管理の方法労働者からの申告制が一般的

2020年9月の厚労省ガイドライン改訂で、「管理モデル」(副業先での労働時間をあらかじめ設定する方式)が導入され、企業の管理負担が軽減されました。

社会保険の二重加入問題

加入要件

副業先(パート・アルバイト含む)でも、以下の要件を満たすと健康保険・厚生年金への加入義務が生じます。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 月額賃金8.8万円以上(2022年10月以降の適用拡大)
  • 2ヶ月超の雇用見込み
  • 学生でない

二重加入時の手続き

本業・副業両方で社会保険に加入する場合、「被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を年金事務所に提出し、保険料を標準報酬月額の比率で按分して各社が負担します。

退職後の競業避止義務

在職中の競業避止義務

在職中は労働契約に基づく誠実義務として、競合行為は禁止されます(明文規定なくても)。

退職後の競業避止特約

退職後の競業禁止は、合意がなければ原則自由です。退職後も競業禁止を有効にするには特約(競業避止合意)が必要です。

合理的範囲の判断基準(東京地判等):

基準合理的とされる範囲
期間1〜2年(3年超は無効リスク高)
地域営業地域・実際の競業可能地域
業種特定の業務・職種に限定
代償措置競業禁止手当・退職金の加算

代償措置がない競業避止特約は無効とされる可能性が高い(東京地判平成14年8月30日等)。

まとめ

副業・兼業は厚労省の方針転換により原則容認の方向に進んでいます。企業の一律禁止条項は合理的理由なしに有効とはなりにくく、許可制の整備が現実的な対応です。社会保険の二重加入・労働時間の通算管理は実務上の課題であり、適切なルール整備が求められます。退職後の競業避止は代償措置を伴う合理的な特約があれば有効です。

※ 本記事は法律の一般的な知識を提供するものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な法的問題については、弁護士にご相談ください。

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