【スマホ新法】アップル・グーグル手数料はどう変わった?2026年2月公取委報告と業界の反応
企業法務最終更新: 2026-04-16

【スマホ新法】アップル・グーグル手数料はどう変わった?2026年2月公取委報告と業界の反応

この記事のポイント

  • 2025年12月18日にスマートフォンソフトウェア競争促進法(スマホ新法)が全面施行
  • 2026年2月17日、公取委がアップル・グーグルの遵守報告書を公表し対応状況を開示
  • アップルは総手数料最大26%(App Store 21%+決済処理5%)、外部ストア受け入れとブラウザ選択制を導入
  • グーグルは外部決済制限を撤廃、ゲーム課金に選択制を導入したが手数料本体は30%/15%で据え置き
  • 違反時の罰則は売上の最大20%の課徴金。業界からは「手数料温存=実質無効化」との批判が続く

スマホ新法とは何か

スマートフォンソフトウェア競争促進法(通称:スマホ新法、令和6年法律第58号)は、スマートフォンのOS・アプリストア・ブラウザ・検索エンジンといった特定の重要ソフトウェアについて、有力な事業者(指定事業者)による独占的行為を禁止し、公正な競争を促進することを目的とした法律です。

2024年6月に成立し、2025年12月18日に全面施行されました。日本版「DMA(デジタル市場法)」とも呼ばれ、欧州連合のDMAに続く本格的なプラットフォーマー規制として世界的に注目を集めています。

対象となる事業者

公正取引委員会は本法の「指定事業者」として、以下の企業を指定しました。

分野指定事業者
モバイルOSアップル(iOS)、グーグル(Android)
アプリストアアップル(App Store)、グーグル(Google Play)
ブラウザアップル(Safari)、グーグル(Chrome)
検索エンジングーグル(Google Search)

これらの事業者は、市場における圧倒的地位を持つため、独占禁止法よりも踏み込んだ事前規制に服することになります。

2026年2月 公取委報告書の要点

2026年2月17日、公正取引委員会はアップル・グーグルの遵守報告書を公表し、両社がスマホ新法の規定にどのように対応したかを開示しました。報告書の要点は次のとおりです。

  • 外部アプリストアの受け入れ: アップルが初めて日本でサードパーティ製アプリストアの設置を認める
  • 外部決済の解禁: グーグルが外部決済リンクへの誘導制限を撤廃
  • ブラウザ選択画面: iOS初回起動時に複数のブラウザを提示
  • 検索エンジン選択: Android端末でのGoogle以外の検索エンジン選択肢を提示
  • データポータビリティ: アプリ事業者への利用者データ移行手段を整備

ただし、公取委は「手数料水準と算定根拠」について追加の説明を求めており、完全な合格点ではない、玉虫色の評価にとどまっています。

アップルの対応:総手数料最大26%

アップルは従来、App Storeで標準30%・中小開発者15%の手数料を徴収していました。スマホ新法施行後も「手数料ゼロ」にはせず、次のような新たな体系を導入しました。

項目アップルの新手数料備考
App Store手数料(コアテクノロジー料)最大21%アプリ配信・開発ツール・審査等の対価
決済処理手数料5%アップル決済を使う場合のみ
外部決済を選んだ場合21%決済処理5%は非課税
外部アプリストアでの配信13%前後アップル決済不使用時
中小開発者(年間100万ドル未満)最大11%軽減措置

アップルはこれまで「手数料は統合されたプラットフォームの対価」と説明してきましたが、スマホ新法に対応してApp Store手数料決済処理手数料を分離し、開発者は決済方法を選択できるようになりました。外部決済を使えば決済処理手数料5%は不要となりますが、App Store手数料21%は引き続き発生します。

アップルの追加対応

  • 外部アプリストアの受け入れ: iOS上で「Alternative App Marketplace」として第三者ストアを設置可能に
  • ブラウザ選択画面: Safari以外のブラウザ(Chrome、Firefox、Edge等)を初期設定で提示
  • WebKit縛りの緩和: 他社エンジンを搭載したブラウザの配信を解禁
  • NFC決済APIの開放: Apple Pay以外の決済アプリにNFCアクセスを提供

グーグルの対応:選択制だが手数料本体は据え置き

グーグルの対応はアップルと対照的です。

項目グーグルの対応変更の有無
Google Play手数料(大規模)30%変更なし
Google Play手数料(中小・年間100万ドル未満)15%変更なし
サブスクリプション手数料15%変更なし
外部決済利用制限廃止改正:自由化
ゲーム内課金選択制導入改正:外部決済OK
外部アプリストア引き続きAPK直接配信可従来どおり

グーグルはもともと外部APK配布を許可しており、アップルほど「封鎖的」とは言われていませんでした。しかしゲーム内課金については「Google Play Billing」の利用が強制されていたため、この点を改正しました。ただし外部決済を選択した場合でも、グーグルは「サービス対価」として10〜20%の手数料を別途徴収する方針を示しています。

アップル vs グーグル 対応比較

項目アップルグーグル
総手数料水準最大26%(21%+5%)30%(大規模)/15%(中小)
外部決済解禁(App Store 21%は残る)解禁(サービス料10〜20%)
外部アプリストア新規に受け入れAPKで従来から可
ブラウザ選択画面導入(iOS初回起動時)以前から実装済み
検索エンジン選択デフォルト変更可初期画面で選択肢提示
中小開発者向け軽減最大11%15%(変更なし)

アプリ事業者・開発者への影響

中小のアプリ開発者やスタートアップにとって、スマホ新法は理論上は大きなメリットをもたらすはずでした。しかし実務的には次のような課題が残っています。

メリット

  • 外部決済を選べば決済処理手数料(5%)を圧縮可能
  • 外部アプリストアで独自マーケティングが可能
  • ブラウザ選択でSafari縛りから解放(PWAの表現力が拡大)
  • 利用者データのポータビリティで乗り換えが容易に

デメリット・課題

  • 手数料総額は思ったほど下がらない(最低でも21〜26%)
  • 外部決済を導入しても返金・サポート対応は自社負担
  • 外部ストア配布にはアップル側の契約・審査が必要
  • 決済手段の多様化で経理・税務処理が複雑化
  • 消費者向けに複数決済手段を案内するUI設計コスト

業界からの批判:「実質無効化」

施行から4ヶ月が経過し、業界団体やアプリ事業者からは厳しい批判が相次いでいます。代表的な指摘は以下のとおりです。

  • 「外部決済誘導に10〜20%の手数料を取るのは実質無効化」: 決済処理手数料相当(3〜4%)を大きく上回る金額を徴収することで、外部決済のメリットが消えるとの指摘
  • 「手数料の算定根拠が不明確」: アップル・グーグルとも手数料水準の合理的根拠を十分に開示していない
  • 「中小事業者優遇(11%・15%)でも依然として高い」: 欧州のDMAでは「有効な競争」が審査基準とされており、日本もそれに倣うべきとの声
  • 「外部ストア設置のハードルが高い」: 独自のセキュリティ基準・契約条件があり、実際に参入した事業者は少数

公正取引委員会は「手数料の合理性についてはさらに検討する」との立場を示しており、追加の調査・指導の可能性が残っています。

違反時の罰則:対象行為と課徴金

スマホ新法の実効性を支える仕組みが課徴金制度です。指定事業者が禁止行為に違反した場合、公取委は次の処分を行うことができます。

対象行為罰則・処分
指定事業者による禁止行為(独占的抱合せ・自社優遇等)売上の最大20%の課徴金
排除措置命令違反2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
虚偽報告1年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
報告義務違反100万円以下の罰金
検査妨害1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金

売上の20%というのは従来の独占禁止法(最大10%)の倍にあたり、世界でも類を見ない高水準です。アップルの日本App Store売上を仮に年間1兆円と見積もると、最大2000億円規模の課徴金が課される計算になります。

消費者にとってのメリット

一般の利用者目線では、次の変化を実感できる可能性があります。

  • アプリ価格の低下余地: 手数料圧縮分を価格に還元する開発者が増える
  • 外部決済の普及: PayPay・楽天ペイ等の国産決済が使えるアプリの増加
  • ブラウザの選択肢: iPhoneでもChromeの真価(独自エンジン)を発揮
  • 検索エンジンの多様化: Bing・Yahoo!・DuckDuckGo等が初期選択肢に登場
  • アカウント乗り換えの容易化: データポータビリティで囲い込みが緩和

ただし、外部決済には返金手続きの複雑化不正課金リスクも伴います。公取委は消費者保護の観点から、事業者に対して返金・サポート体制の整備を求めています。

今後の見通し

スマホ新法は施行されたばかりであり、今後次のような展開が予想されます。

短期(2026年中)

  • 公取委が手数料水準についてさらに情報提供命令を発する可能性
  • 外部アプリストアの実質的稼働事例の出現(EpicGames Store、Microsoft Store等)
  • 大手アプリ(Netflix、Spotify、ゲーム大手)による外部決済の試験導入

中期(2027〜2028年)

  • 手数料をめぐる実際の課徴金処分が発生する可能性
  • アップル・グーグルに対する審決取消訴訟で司法判断が蓄積
  • EU DMA・米国の類似法との国際的な規制協調が進展

長期(2030年以降)

  • 日本発の独立系アプリストアが登場し、競争が本格化
  • AIエージェント・Web3等の次世代技術にも規制が拡大される可能性
  • 「プラットフォーマー税」的な性格の課税ルールが整備

まとめ

スマホ新法は、日本で長年懸案とされてきたアプリ経済圏の独占構造に本格的にメスを入れた画期的な法律です。2025年12月18日の全面施行と2026年2月17日の公取委報告により、アップル・グーグルの対応は具体化しましたが、手数料水準については業界から根強い批判があります。

アプリ事業者にとっては、外部決済や外部ストアといった選択肢が増えた一方、総コストの削減効果は限定的という現実もあります。公取委による追加指導・課徴金処分の動向を注視しつつ、自社のビジネスモデルに最適な配信戦略を再検討することが重要です。

プラットフォーマー規制は世界的潮流であり、スマホ新法への対応は日本企業のグローバル競争力を左右します。契約条件の変更、外部決済導入、データ保護・消費者対応など、法務・コンプライアンス面での対応が必要な場合は、IT分野に精通した弁護士にご相談ください。

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※ 本記事は法律の一般的な知識を提供するものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な法的問題については、弁護士にご相談ください。

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