企業法務弁護士監修済
Q.日本で商標を登録するには?特許庁に納める費用・先に出願した者が優先されるルール・海外企業の手続を、事業者向けに解説
A.
日本の商標権は特許庁の登録で発生し、先に出願した人が優先されます(商標法8条1項・18条1項)。特許庁に納める費用は、出願時に3,400円+1区分8,600円、登録時に1区分32,900円(10年分)です。海外企業は日本国内の代理人を通じて出願します。
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日本の商標権は、特許庁に出願して設定の登録を受けたときに発生します(商標法18条1項)。同じか似た商標について出願が重なったときは、先に出願した人が優先されます(商標法8条1項)。そのため、日本で事業を始める予定がある海外企業や、新しいブランドを出す会社は、使い始める前に出願を済ませることが大切です。特許庁に納める費用は、出願時に1件3,400円と区分ごとに8,600円、登録時に区分ごとに32,900円(10年分)です。
こんな場面で問題になります
・海外で使っているブランドで日本に進出しようとしたら、同じ名前がすでに日本で第三者に登録されていた。
・新商品の名前を決めてパッケージを作ったあとで、似た登録商標があると分かった。
・自社の商品名を、他社がネット通販で無断で使っている。
・取引先の代理店が、自社ブランドを代理店名義で日本で出願していた。
1. 商標登録で得られる権利
商標とは、文字、図形、記号、立体的形状、色彩、音などで、事業者が自分の商品や役務(サービス)について使うものです(商標法2条1項)。登録を受けると、商標権者は、指定した商品・役務についてその登録商標を使う権利を独占できます(商標法25条)。
他人が同じ商標や似た商標を、同じ商品・役務や似た商品・役務に使う行為は、商標権の侵害になります(商標法25条・37条1号)。商標権者は、侵害の停止や予防を請求でき(商標法36条)、損害賠償の請求では損害額の推定規定も使えます(商標法38条)。
2. 先に出願した人が優先される(先願主義)
同じか似た商標を、同じか似た商品・役務に使うものとして、異なる日に2つ以上の出願があったときは、最も早く出願した人だけが登録を受けられます(商標法8条1項)。ただし、先に出願した人の承諾があり、商品・役務の間で混同を生ずるおそれがないときは、後の出願も登録を受けられます(同項ただし書)。日本で先に使っていたかどうかではなく、出願日の先後で決まるのが原則です。
海外で長く使っているブランドでも、日本で出願していなければ、第三者が先に出願して登録されてしまうおそれがあります。日本進出を決めた段階で、早めに出願を検討してください。
3. 登録を受けられない商標
次のような商標は、登録を受けられません。
・商品の普通名称、慣用されている商標、産地・品質・用途などを普通に表示するだけの商標、ありふれた氏や名称、極めて簡単でありふれた標章(商標法3条1項)。ただし、使われた結果、誰の商品か分かるようになったものは登録できる場合があります(同条2項)。
・先に出願された他人の登録商標と同じか似ていて、同じか似た商品・役務に使うもの(商標法4条1項11号)。
出願の前に、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で先行する登録商標を調べておくと、拒絶の可能性をある程度見通せます。
4. 区分と特許庁に納める費用
出願では、使う商品・役務を指定し、政令で定める区分に従って指定します(商標法6条1項・2項)。区分は、商品・役務が似ているかどうかの範囲を決めるものではありません(同条3項)。
特許庁に納める主な費用は次のとおりです。
・出願手数料:1件につき3,400円に、1区分につき8,600円を加えた額(特許法等関係手数料令4条2項)
・登録料(10年分):1区分につき32,900円(商標法40条1項、商標法施行令4条1項)
・登録料を2回に分けて納める場合:登録時と、存続期間の満了前5年までに、それぞれ1区分につき17,200円(商標法41条の2第1項、商標法施行令5条1項)
・更新登録の登録料:1区分につき43,600円(商標法40条2項、商標法施行令4条2項)
区分を増やすほど費用が上がるため、実際に使う商品・役務を確かめてから指定することが大切です。
5. 存続期間・更新と、使わない商標の取消し
商標権の存続期間は、設定の登録の日から10年です(商標法19条1項)。更新登録の申請により更新でき(同条2項)、申請は満了前6か月から満了の日までに行います(商標法20条2項)。
登録商標を継続して3年以上、日本国内で誰も使っていないときは、誰でもその登録の取消しを求める審判を請求できます(商標法50条1項)。登録したあとも、実際に使っていることを示す資料を残しておくことが重要です。
6. 海外企業が日本で出願するとき
日本国内に住所や営業所がない人(在外者)は、原則として、日本国内に住所または居所がある代理人を通じて手続をしなければなりません(商標法77条2項で準用する特許法8条1項)。
マドリッド協定議定書に基づく国際登録で日本を指定する方法もあります。この場合、日本を指定した領域指定は、国際登録の日にされた日本の商標登録出願とみなされます(商標法68条の9第1項)。また、外国で先に出願している場合は、パリ条約による優先権を主張できる場合があります(商標法13条1項で準用する特許法43条)。
7. 代理店や元取引先に先に登録されたとき
日本の代理店や販売店が、海外の本社のブランドを自分の名義で出願してしまうことがあります。この場合に使える仕組みが2つあります。
1つ目は、出願の段階での拒絶です。日本国内または外国で、他人の商品・役務を示すものとして需要者の間に広く知られている商標と同じか似た商標を、不正の目的で使うものは、登録を受けられません(商標法4条1項19号)。
2つ目は、登録後の取消しです。パリ条約の同盟国、世界貿易機関(WTO)の加盟国、商標法条約の締約国で商標権に相当する権利を持つ人の商標を、その代理人や代表者(出願の日前1年以内にそうであった人を含む)が、正当な理由なく承諾を得ずに出願して登録したときは、権利を持つ人はその登録の取消しを求める審判を請求できます(商標法53条の2)。ただし、この審判は設定の登録の日から5年を過ぎると請求できません(商標法53条の3)。
いずれも、事後の手続には時間と費用がかかります。代理店契約を結ぶときに、商標の出願・登録は本社の名義で行うこと、契約終了時に権利や出願を移転することを契約書に定めておくと、紛争を防ぎやすくなります。
8. 侵害した場合・された場合の刑事責任
登録商標を指定商品・役務に使うなど商標権を直接侵害した者は、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方に処せられます(商標法78条)。類似する商標の使用など、侵害とみなされる行為(商標法37条)をした者は、5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはその両方です(商標法78条の2)。法人の業務として侵害した場合は、法人にも3億円以下の罰金が科されます(商標法82条1項1号)。
今すぐできること
・使っている、または使う予定の商品名・サービス名・ロゴを一覧にする。
・J-PlatPatで、同じか似た登録商標がないか確認する。
・実際に使う商品・役務と区分を整理する。
・海外で使っているブランドは、日本での出願の有無を確認する。
・登録済みの商標の更新期限と、使用の証拠(パッケージ、広告、取引書類)を整理する。
弁護士に相談すべきタイミング
・他社から、商標権侵害を理由とする警告書が届いた。
・自社ブランドと同じか似た商標を、第三者や代理店が日本で出願・登録していた。
・ネット通販などで、自社の商標を使った模倣品が売られている。
・日本進出にあたり、ブランドの使用やライセンスを契約で決める必要がある。
警告書への回答や、相手の登録に対する手続には期限があるものもあるため、届いた時点で早めにご相談ください。
よくあるご質問
Q. 出願から登録まで、どのくらいかかりますか?
審査の期間は、出願の内容や審査の状況によって変わります。拒絶の理由が通知された場合は、意見書や補正で対応する期間も必要になります。日本での販売開始日が決まっているときは、それより十分前に出願することをおすすめします。
Q. 会社名(商号)を登記していれば、商標登録は不要ですか?
商号の登記と商標登録は別の制度です。会社名を商品やサービスの名前として使う場合は、商標登録を受けていないと、他人が先に出願して登録するおそれがあります(商標法8条1項)。
Q. 海外で登録している商標は、日本でも保護されますか?
商標権は国ごとに発生するため、海外での登録だけでは日本の商標権は得られません。日本で出願するか、国際登録で日本を指定する必要があります(商標法68条の9第1項)。
Q. 他社に似た商標を先に登録されてしまったら、どうすればよいですか?
相手の登録が3年以上使われていなければ、取消しの審判を請求できます(商標法50条1項)。ほかにも、相手から使用の許諾を受ける、譲渡を交渉する、自社の商標を変えるといった選択肢があります。状況によって取るべき手段が変わるため、相手の登録内容を確認したうえで検討してください。
Q. 文字の商標とロゴの商標は、1つの出願でまとめられますか?
商標登録出願は、商標ごとにしなければなりません(商標法6条1項)。文字だけの商標と、図形を組み合わせたロゴでは商標が異なるため、それぞれ出願が必要です。どの形で使うかを決めてから出願の範囲を考えると、費用を抑えやすくなります。
Q. 日本の会社なら、自社で出願することもできますか?
日本国内に営業所がある会社は、代理人を立てずに自社で出願することもできます。日本国内に住所や営業所がない海外企業は、原則として日本国内の代理人を通じて手続をする必要があります(商標法77条2項で準用する特許法8条1項)。
Q. 登録料は一度払えば終わりですか?
10年分の登録料を納めると、存続期間は登録の日から10年です(商標法19条1項)。その後も使い続ける場合は、更新登録の申請と登録料の納付が必要です(商標法20条2項・40条2項)。
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