企業法務弁護士監修済

Q.取引先との契約を途中で解除できますか?合意解除・解除条項・債務不履行による解除の要件と、解除前に確認すべきことを経営者・法務担当者向けに解説

A.

合意、契約書の解除条項、相手の債務不履行による法定解除のいずれかで途中解除できます。不履行による解除は原則として催告が必要で、不履行が軽微なときはできません(民法541条)。根拠のない一方的な解除は自社の契約違反になるおそれがあります。

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取引先との契約は、①相手と合意する、②契約書の解除条項を使う、③相手の債務不履行を理由に法律の規定で解除する、のいずれかの方法で途中解除できます。債務不履行による解除は、原則として相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないことが必要です(民法541条)。ただし、期間経過時の不履行が軽微なときは解除できず(同条ただし書)、不履行が自社の責めに帰すべき事由によるときも解除できません(民法543条)。根拠を欠いたまま一方的に「解除」を通知すると、自社が契約違反として損害賠償を求められるおそれがあるため、通知の前に契約書と事実関係を確かめることが大切です。 こんな場面で問題になります ・業務委託先の納品が何度も遅れ、品質も約束に届かないため、契約期間の途中で切り替えたい。 ・自社の方針転換で、残り2年ある保守契約やシステム開発契約を終わらせたい。 ・取引先の経営が悪化し、代金の支払が止まっている。 ・長年続けてきた代理店契約を、更新時期を待たずに終了させたい。 1. 合意による解除(合意解除) 当事者は、法令の制限内で契約の内容を自由に決めることができます(民法521条2項)。そのため、双方が合意すれば、契約期間の途中でも契約を終了させることができます。合意解除では、終了日、未払代金・前払金の精算、仕掛中の業務の扱い、秘密情報や貸与物の返還、相互に請求をしない旨(清算条項)を書面で定めておくのが通例です。口頭の合意だけでは、後から条件をめぐって争いになりやすくなります。合意書には締結日と双方の署名または記名押印を入れ、どの契約をいつ終了させるのかを特定しておきます。 2. 契約書の解除条項による解除(約定解除) 多くの取引契約には、「相手方が本契約に違反し、催告後○日以内に是正しないとき」「支払停止や破産手続開始の申立てがあったとき」に解除できるという条項や、「○か月前の書面通知により中途解約できる」という条項が置かれています。契約で解除権が定められているときは、その解除は相手方に対する意思表示によって行い、いったんした意思表示は撤回できません(民法540条)。条項が定める通知期間・通知方法・違約金の有無を確認し、その手順どおりに進めることが基本です。 3. 債務不履行による解除(法定解除) 契約書に解除条項がなくても、相手が債務を履行しない場合は、法律の規定により解除できます。 ・催告による解除:相手方が債務を履行しないときは、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がなければ解除できます。ただし、期間を経過した時の不履行が、その契約と取引上の社会通念に照らして軽微であるときは解除できません(民法541条)。 ・催告によらない解除:債務の全部の履行が不能なとき、相手が履行を拒絶する意思を明確に表示したとき、特定の日時までに履行しなければ契約の目的を達することができない場合にその時期を過ぎたときなどは、催告をせずに直ちに解除できます(民法542条1項)。債務の一部について履行が不能なときなどは、契約の一部だけを解除することもできます(同条2項)。 ・自社に原因がある場合:債務の不履行が債権者(解除しようとする側)の責めに帰すべき事由によるときは、解除できません(民法543条)。 4. 契約の種類ごとの解除のルール 業務委託の多くは、民法の委任(法律行為の委託)か準委任(法律行為でない事務の委託・民法656条)、または請負にあたります。委任は、各当事者がいつでも解除できます(民法651条1項)。ただし、相手方に不利な時期に解除したときなどは、やむを得ない事由がない限り、相手方の損害を賠償しなければなりません(同条2項)。請負では、請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除できます(民法641条)。 フリーランス(個人、または代表者1人だけで従業員を使用しない法人)に継続して業務を委託している場合は、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)にも注意が必要です。6か月以上の継続的業務委託を解除する場合(期間満了後に更新しない場合を含みます)、従業員を使用する事業者や役員が2人以上いる法人(特定業務委託事業者・同法2条6項)は、原則として少なくとも30日前までに予告しなければなりません(同法16条1項・13条1項、同法施行令3条)。予告後に相手から解除理由の開示を求められたときは、原則として遅滞なく開示する必要があります(同条2項)。 5. 解除した後の精算 解除権を行使すると、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負います(民法545条1項)。受け取った金銭を返還するときは受領の時からの利息を付け(同条2項)、金銭以外の物を返還するときはその後に生じた果実も返還します(同条3項)。また、解除をしても、相手の債務不履行によって生じた損害の賠償を請求することは妨げられません(同条4項、民法415条)。継続的な契約では、解除の効果が将来に向かってのみ生じる旨を契約で定めていることも多く、条項の確認が必要です。 6. 違約金条項と自動更新条項の確認 契約書に違約金の定めがある場合、違約金は損害賠償額の予定と推定されます(民法420条3項)。賠償額を予定していても、履行の請求や解除権の行使は妨げられません(同条2項)。自社の都合で中途解約する場合は、違約金の額と算定方法が、解除の判断に直結します。 また、「期間満了の○か月前までに申し出がなければ自動的に1年更新する」という自動更新条項がある契約では、申出の期限を過ぎると次の期間も契約が続きます。中途解約よりも、次の更新をしない形で終了させるほうが負担が小さい場合もあるため、更新の時期と申出期限を先に確認します。 7. よくある失敗 ・催告の期間が短すぎたり、何を履行すべきかがあいまいだったりして、催告による解除の要件を満たさない。 ・相手の不履行を理由に解除したが、実は自社の側にも支払遅れや資料提供の遅れがあり、反論を受ける。 ・解除の通知と同時に代金の支払を止め、自社の債務不履行を主張される。 ・解除の通知を担当者間のチャットだけで済ませ、到達日や内容が後で争いになる。 今すぐできること ・契約書の解除条項、中途解約条項、通知期間、違約金・損害賠償の定めを確認する。 ・相手の不履行を理由にする場合は、納期遅れや不具合の日時と内容を、メール・検収記録などで時系列に整理する。 ・催告をするときは、履行を求める内容と相当の期間を明記し、到達日を証明できる方法(内容証明郵便など)で送る。 ・委託先がフリーランス(個人や一人法人)か、委託の期間が6か月以上かを確認し、該当すれば30日前の予告を準備する。 ・解除後の切替先の確保、データ・貸与物の返還、未払代金の精算の段取りを決めておく。 弁護士に相談すべきタイミング ・相手が不履行を認めず、「解除は無効」「違約金を払え」と主張している。 ・契約書に解除条項がない、または条項の解釈が相手と食い違っている。 ・自社の都合による中途解約で、相手から逸失利益を含む高額の損害賠償を求められそうだ。 ・取引先の支払が止まり、倒産のおそれがあって、代金の回収と解除を同時に検討する必要がある。 ・海外の取引先との契約で、準拠法や紛争解決の方法が問題になっている。 よくあるご質問 Q. 契約書に中途解約の条項がない場合、自社の都合で解除できますか? 相手との合意があれば解除できます。合意がない場合は、相手に債務不履行がない限り、法定解除はできません。ただし、委任・準委任ならいつでも解除でき(民法651条1項)、請負なら仕事の完成前に損害を賠償して解除できます(民法641条)。いずれも損害賠償が問題になる場合があります。 Q. 催告の「相当の期間」は何日くらいですか? 法律に日数の定めはありません。債務の内容や性質に照らして、履行の準備と実行に必要な期間かどうかで判断されます。契約書に是正期間(例:通知後14日)が定められていれば、その期間が基準になります。 Q. 納品物に小さな不具合があるだけでも、契約を解除できますか? 催告による解除は、期間を経過した時の不履行が、契約と取引上の社会通念に照らして軽微であるときは認められません(民法541条ただし書)。まずは修補などの履行を求め、契約の目的が達成できるかを確認することになります。 Q. 解除の通知は、メールでもよいですか? 解除は相手方に対する意思表示で行います(民法540条1項)。契約書で書面による通知が求められていればそれに従う必要があります。後で到達や内容を争われないよう、内容証明郵便など記録の残る方法をとるのが一般的です。 Q. 解除した場合、すでに支払った前払金は戻りますか? 解除をすると、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負うため、前払金の返還を求めることができます(民法545条1項)。金銭を返還するときは、受領の時からの利息を付けなければなりません(同条2項)。一方、相手がすでに行った業務の対価をどう精算するかは、契約書の定めと業務の内容によって決まります。 Q. 長年続いた取引を、更新しないことで終わらせてもよいですか? 期間の定めがある契約は、期間が満了すれば終了するのが原則で、更新しない旨の通知期限が契約書に定められていればそれに従います。相手がフリーランス(個人や一人法人)で、6か月以上の継続的業務委託にあたる場合は、更新しないときも原則として30日前までの予告が必要です(フリーランス法16条1項)。

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