改正の背景
従来の労働安全衛生法は、「労働者」(雇用関係にある者)のみを保護対象としていました。しかし、建設業の一人親方やフリーランスのITエンジニアなど、雇用関係にない個人事業者が同じ現場で同様の危険にさらされながら法的保護の対象外となっている問題が指摘されてきました。
2026年の改正(令和7年施行分)により、個人事業者(一人親方・フリーランス等)も労働安全衛生法の保護対象に加わります。
改正のポイント
2026年4月施行分
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 個人事業者の保護 | 事業者が講じる安全衛生措置の保護対象に個人事業者を追加 |
| 注文者の責務拡大 | 仕事の注文者に対し、個人事業者の安全を確保するための配慮義務を明確化 |
| 危険有害業務の制限 | 有機溶剤・特定化学物質等を扱う業務での保護措置を個人事業者にも適用 |
2026年10月施行分
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 安全教育 | 個人事業者に対する安全衛生教育の実施義務(特別教育相当) |
| 健康診断 | 危険有害業務に従事する個人事業者の健康診断受診の努力義務 |
| 報告義務 | 個人事業者の重大な負傷・疾病についても報告対象に追加 |
注文者(発注者)の新たな義務
改正により、仕事を発注する者(注文者)には以下の義務が課されます。
具体的な措置
- 安全な作業環境の提供: 足場・安全帯・保護具等の提供
- 危険情報の提供: 作業場所の危険性に関する情報を事前に伝達
- 作業手順の指示: 安全な作業方法の指示・教育
- 混在作業の管理: 労働者と個人事業者が同じ現場で作業する場合の安全管理
違反した場合の罰則
注文者が安全措置義務に違反した場合、50万円以下の罰金(労働安全衛生法119条・120条)が科される可能性があります。
個人事業者自身の義務
個人事業者にも以下の義務・努力義務が課されます。
- 保護具の使用: 提供された保護具を適切に使用する義務
- 安全教育の受講: 危険有害業務に関する教育を受ける努力義務
- 健康診断の受診: 危険有害業務従事者は健康診断を受ける努力義務
- 作業手順の遵守: 指示された安全な作業方法に従う義務
フリーランスへの影響
IT・クリエイティブ分野のフリーランスにとっては、建設業ほどの直接的影響は限定的ですが、長時間労働による健康障害の防止など、発注者の配慮義務が及ぶ場面が想定されます。2024年11月施行のフリーランス保護法(特定受託事業者保護法)と合わせて、フリーランスの労働環境整備が進んでいます。