【2025年6月1日施行】職場の熱中症対策義務化|労働安全衛生規則改正の実務対応
労働問題最終更新: 2026-05-18約5分で読めます

【2025年6月1日施行】職場の熱中症対策義務化|労働安全衛生規則改正の実務対応

この記事のポイント

  • 2025年6月1日施行の労働安全衛生規則改正により、職場の熱中症対策が法的義務化
  • WBGT 28度超または気温31度超で1時間以上または連続作業時間ありの場合に対象
  • 対策内容: ①報告体制 ②休憩場所等の整備 ③発症時の事業者対応の3点
  • 違反時のペナルティ: 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金(労安衛法119条)
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2025年6月1日、労働安全衛生規則の改正(厚生労働省令第59号)が施行され、職場における熱中症対策が法的義務となりました。建設業・屋外作業・倉庫業など暑熱環境下で働く労働者の死亡災害が年間20-30件規模で発生してきた背景を受けた重要改正です。

改正の概要

適用条件(労安衛則612条の2)

以下のいずれかに該当する作業に対し、熱中症対策が義務化されます。

区分基準
WBGT基準WBGT値が28度を超える場合
気温基準気温が31度を超える場合
作業時間1時間以上の連続作業または1日4時間以上の作業

WBGT(湿球黒球温度)は気温・湿度・輻射熱を統合した指標で、熱中症リスクの国際標準となっています。

対象業種

すべての業種が対象ですが、特に影響が大きいのは:

  • 建設業(屋外工事、解体工事、舗装工事)
  • 農林業(収穫作業、伐採作業)
  • 運輸業(配送、倉庫荷役)
  • 製造業(製鉄、鋳造、溶接など熱源近接作業)
  • 警備業(屋外警備)
  • 清掃業(屋外清掃)

事業者の義務(3つの柱)

1. 報告体制の整備(規則612条の2第1項)

労働者が熱中症の自覚症状を訴えた場合、または周囲が異変を察知した場合の速やかな報告ルートを確立する必要があります。

  • 現場責任者・安全衛生担当者への連絡経路明示
  • 報告のための連絡手段(無線、携帯電話等)確保
  • 報告内容の記録様式策定

2. 休憩場所等の整備(規則612条の2第2項)

休憩のための適切な場所を提供する義務があります。

  • 冷却・空調設備を備えた休憩場所
  • 冷たい飲料水の常備
  • 体温を下げるための氷・冷却タオル等の備品
  • 屋外の場合は日陰の確保

3. 発症時の事業者対応(規則612条の2第3項)

熱中症の発症が疑われる場合、事業者は以下の対応を義務付けられます。

  • 作業中止および涼しい場所への移動
  • 体温の冷却(首・脇・足の付け根など)
  • 水分・塩分の補給
  • 重症の場合は救急要請(意識障害、けいれん等)
  • 病院搬送および家族への連絡

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罰則

労働安全衛生法119条により、規則違反には以下の罰則が科されます。

  • 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金(労安衛法119条1号)
  • 死傷事故発生時はさらに業務上過失致死傷罪(刑法211条)の可能性
  • 民事責任として安全配慮義務違反による損害賠償請求(労働契約法5条)

過去の判例傾向

熱中症死亡事案では、判例で3,000万-5,000万円規模の損害賠償が認められるケースが続いています。改正法施行により、義務違反が認定された場合の責任追及が更に強化される見込みです。

実務対応のチェックリスト

事業者側

  1. ☐ 6月までにWBGT測定器を配備(建設現場、屋外作業場ごと)
  2. ☐ 熱中症対策マニュアルの整備と労働者への周知
  3. 休憩場所の確保(テント、空調車、エアコン付き休憩室)
  4. 冷却装備の配布(クールベスト、ファン付き作業着等)
  5. 救急対応訓練の実施(年1回以上)
  6. ☐ 安全衛生委員会で熱中症リスク評価実施
  7. ☐ 健康診断項目への熱中症リスク評価追加検討

労働者側

  1. ☐ 自身の体調変化を上司に報告
  2. ☐ 水分・塩分補給を励行(1時間あたり250ml以上目安)
  3. ☐ 帽子・通気性の良い作業着の着用
  4. ☐ 前日の睡眠・飲酒・体調管理
  5. ☐ 持病のある場合は事前に上司・産業医に相談

過去の死亡災害状況

厚生労働省「労働災害発生状況」によると、熱中症による職場死亡災害は:

年度死亡者数重症者数
2021年20名547名
2022年30名827名
2023年28名880名
2024年31名1,045名

特に建設業・運輸業で集中的に発生しており、今回の改正は背景としてこの統計データを踏まえています。

民事責任の論点

安全配慮義務違反

労働契約法5条は、使用者に労働者の生命・身体の安全確保義務を課しています。熱中症対策義務違反は、典型的な安全配慮義務違反として民事賠償請求の根拠となります。

過失の判断要素

裁判所が過失を判断する際の主要要素:

  • 改正後の規則遵守状況(マニュアル整備、休憩場所確保)
  • 当日のWBGT値・気温の認識可能性
  • 過去の同様事故の予見可能性
  • 労働者の年齢・健康状態への配慮

損害賠償の計算

熱中症死亡事案の損害賠償項目:

  1. 逸失利益: 将来得たであろう収入の現在価値
  2. 慰謝料: 本人と遺族
  3. 葬儀費用: 約150万円程度
  4. 弁護士費用: 損害額の10%程度

合計で3,000万-5,000万円規模になることが多く、重症後遺障害事案では更に高額化する可能性があります。

まとめ

2025年6月1日施行の労働安全衛生規則改正により、職場の熱中症対策が法的義務となりました。違反時の刑事責任(6か月以下の懲役)に加え、民事賠償リスク(3,000万円規模)も無視できません。

今すぐ実施すべきこと: - 6月までにWBGT測定器・休憩場所・冷却装備の整備 - 熱中症対策マニュアルの作成と研修実施 - 救急対応訓練の実施

労災・安全配慮義務違反・労務管理について、労働法に詳しい弁護士へのご相談をお勧めします。

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※ 本記事は法律の一般的な知識を提供するものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な法的問題については、弁護士にご相談ください。

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