ストレスチェック義務化の拡大とは
2025年5月14日に公布された改正労働安全衛生法により、これまで従業員50人以上の事業場に限定されていたストレスチェックの実施義務が、従業員数に関係なく全ての事業場に拡大されることが決まりました。
現在、日本の事業場の約8割が従業員50人未満の小規模事業場です。これらの事業場ではストレスチェックは「努力義務」にとどまっており、実施率は低い状況でした。メンタルヘルス不調による休職・離職が中小企業でも深刻化する中、法的義務化に踏み切った形です。
施行時期はいつ?
改正法の施行日は「公布後3年以内に政令で定める日」とされており、具体的な日付はまだ確定していません。最長で2028年5月頃の施行が見込まれています。
| スケジュール | 内容 |
|---|---|
| 2025年5月14日 | 改正法公布 |
| 2026年2月 | 厚労省が小規模事業場向けマニュアルを公表 |
| 2026〜2027年 | 周知・準備期間 |
| 2028年頃 | 施行(全事業場で義務化) |
企業には約2年間の準備期間が設けられる見込みですので、今から計画的に準備を進めることが重要です。
ストレスチェック制度の基本
ストレスチェックとは
ストレスチェックとは、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査です。質問票(通常57項目)に回答する形式で実施し、高ストレス者には医師による面接指導を勧奨します。
実施の流れ
- 実施体制の整備:実施者(医師・保健師等)と実施事務従事者を選定
- 質問票の配布・回収:年1回以上、全従業員に実施
- 結果の通知:本人に直接通知(事業者には本人の同意なく開示されない)
- 高ストレス者への対応:医師による面接指導の申出を勧奨
- 職場環境の改善:集団分析結果をもとに職場環境を改善
対象となる労働者
常時使用する全ての労働者が対象です。パート・アルバイトも、1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上であれば対象に含まれます。
50人未満の事業場はどう対応すべきか
産業医がいない問題
50人以上の事業場には産業医の選任義務がありますが、50人未満にはありません。ストレスチェックの実施者には医師・保健師等が必要なため、外部委託が現実的な選択肢です。
| 対応方法 | 内容 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 外部委託サービス | Web質問票+医師面接をパッケージ提供 | 1人あたり数百円〜 |
| 地域産業保健センター | 国の無料支援サービス | 無料 |
| 健康診断機関への併託 | 定期健診と同時にストレスチェックを実施 | 1人あたり1,000〜3,000円程度 |
労基署への報告義務
50人未満の事業場については、負担軽減の観点から労働基準監督署への報告義務は課さない方針が示されています。ただし、ストレスチェックの実施義務自体は同じですので注意してください。
厚労省のマニュアル
厚生労働省は2026年2月25日に「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」を公表しました。50人未満の事業場が限られた体制でもストレスチェックを円滑に実施できるよう、具体的な手順やひな形が示されています。
プライバシー保護の重要性
ストレスチェック制度では、プライバシー保護が極めて重要です。
- 検査結果は本人の同意なく事業者に提供してはならない
- 小規模事業場では個人が特定されやすいため、特に配慮が必要
- 結果を理由とした不利益取扱い(解雇・配置転換等)は禁止
- 実施事務従事者には守秘義務が課される(違反には罰則あり)
現行制度での罰則
現在のストレスチェック制度(50人以上の事業場)では、以下の罰則があります。
- 報告義務違反(労基署への報告を怠った場合):50万円以下の罰金
- 守秘義務違反(検査結果を本人の同意なく漏洩):6か月以下の懲役または50万円以下の罰金
50人未満の事業場への拡大後も、守秘義務違反の罰則は同様に適用される見込みです。
今から準備すべきこと
経営者・人事担当者向けチェックリスト
- 現状把握:自社の従業員数、パート・アルバイトの労働時間を確認
- 予算確保:外部委託費用(1人あたり数百円〜3,000円程度)を来期予算に組み込む
- 実施体制の検討:外部委託先の選定、または地域産業保健センターへの相談
- 社内周知:ストレスチェックの目的と流れを従業員に説明する準備
- 個人情報保護規程の整備:ストレスチェック結果の取扱いルールを策定
従業員が知っておくべきこと
- ストレスチェックへの回答は任意(強制はできない)
- 結果は自分だけに通知され、会社には知られない
- 高ストレスと判定されても、面接指導を受けるかは自分で決められる
- 結果を理由に会社から不利益な扱いを受けることは法律で禁止されている
施行までにはまだ時間がありますが、メンタルヘルス対策は従業員の健康と企業の生産性の両方に直結します。義務化を待たず、できることから始めることをお勧めします。