カスハラ対策義務化の背景
近年、顧客や取引先からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント、以下「カスハラ」)が深刻な社会問題となっています。厚生労働省の調査では、過去3年間で約15%の労働者がカスハラを経験したと回答しています。
2026年10月施行の改正労働施策総合推進法(令和7年改正)により、カスハラ対策が全事業者の雇用管理上の措置義務として法制化されます。
カスタマーハラスメントの法的定義
改正法におけるカスハラの定義は、以下の3要素すべてを満たす行為です。
3要素
- 業務に関連した言動であること — 顧客、取引先、施設利用者等からの言動
- 社会的相当性を欠くこと — 正当なクレームや要望を超えた不当な要求・暴言・威嚇等
- 就業環境を害すること — 労働者の就業環境が不快なものとなり、能力発揮に重大な悪影響が生じること
カスハラに該当する行為の例
| 類型 | 具体例 |
|---|---|
| 暴言・侮辱 | 「お前は無能だ」「辞めろ」等の人格否定 |
| 過大な要求 | 土下座の強要、合理性のない金銭要求 |
| 長時間拘束 | 何時間も店舗に居座り対応を要求 |
| 威嚇・脅迫 | 「SNSに晒す」「訴える」等の威圧 |
| セクハラ的言動 | 容姿への言及、つきまとい |
| 繰り返しの電話・来店 | 同じ要求を執拗に繰り返す |
事業者に義務付けられる措置
改正法では、パワハラ防止法(同法30条の2)と同様の枠組みで、以下の3つの措置が義務付けられます。
1. 方針の明確化・周知
- カスハラを許さない企業方針の策定・公表
- 対応マニュアルの整備
- 従業員への教育・研修の実施
2. 相談体制の整備
- 相談窓口の設置(社内または外部委託)
- 相談者のプライバシー保護
- 相談を理由とした不利益取扱いの禁止
3. 事後対応
- 事実関係の迅速かつ正確な確認
- 被害労働者への配慮措置(配置転換、メンタルケア等)
- 再発防止策の実施
違反した場合のリスク
措置義務に違反した場合、以下のリスクがあります。
- 行政指導(助言・指導・勧告)
- 企業名の公表(勧告に従わない場合)
- 安全配慮義務違反として民事上の損害賠償責任
他のハラスメント法との関係
| 法律 | 対象 | 施行 |
|---|---|---|
| パワハラ防止法 | 職場内の優越的関係 | 2020年6月〜 |
| セクハラ防止法 | 性的言動 | 2007年改正〜 |
| マタハラ防止法 | 妊娠・出産・育児 | 2017年1月〜 |
| カスハラ防止法 | 顧客・取引先からの言動 | 2026年10月〜 |