企業法務最終更新: 2026-11-03約12分で読めます弁護士監修済

外国企業が日本の会社を買収・出資するとき|外為法の事前届出・事後報告

この記事のポイント

  • ✓外国法人だけでなく、外国法人などが議決権の50%以上を持つ日本の会社も「外国投資家」にあたる(外為法26条1項)
  • ✓非上場会社の株式取得は1株からでも対内直接投資等にあたる。上場会社は密接関係者と合わせて1%以上となる取得が対象(外為法26条2項1号・3号、対内直接投資等に関する政令2条8項)
  • ✓投資先が指定業種の事業を営んでいれば原則として事前届出が必要。届出は日本銀行を経由し、受理日から30日を経過するまで実行できない(外為法27条1項・2項)。審査が必要なら4か月(場合により5か月)まで延長され得る
  • ✓事前届出免除制度は、役員に就任しない・非公開の技術情報を取得しないなどの基準を守る場合に使える。非上場会社のコア業種への投資には使えず、利用したら45日以内の事後報告が必要
  • ✓2027年1月4日施行の改正で、外国法人の買収を通じた日本企業の株式の間接取得などが新たに対象になる

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外国企業が日本の会社の株式を取得するときは、外為法(外国為替及び外国貿易法)の手続を先に確認します。投資先が指定業種の事業を営んでいれば、原則として事前の届出が必要で、届出の受理日から30日を経過するまで実行できません(外為法27条1項・2項)。指定業種に入らない会社への投資でも、一定の場合は実行後45日以内の事後報告が求められます(同法55条の5第1項)。非上場会社なら1株の取得でも対象になり得るので、小さな案件でも日程を組む前に確認が必要です。

こんな場面で問題になります

  • 海外の親会社が、日本のソフトウェア開発会社の株式の過半数を、創業者から買い取る交渉をしている。
  • 外国のファンドが日本の非上場の部品メーカーに少数出資する予定で、比率が小さければ届出はいらないと考えている。
  • 株式譲渡契約の署名日とクロージング日を決めたいが、外為法の審査にどれだけかかるか分からない。
  • 買収後に、本国の役員を日本の会社の取締役に送り込みたい。

まず確認すること——買い手は「外国投資家」か

外為法の手続の対象は「外国投資家」です。非居住者である個人、外国法令に基づいて設立された法人その他の団体、外国に主たる事務所を有する法人その他の団体がこれにあたります(外為法26条1項1号・2号)。

これらが議決権の50%以上を直接・間接に保有する会社も、外国投資家です(同項3号)。非居住者である個人が役員の過半数を占める法人や、一定の投資事業組合も含まれます(同項4号・5号)。

実務での注意点は、日本の会社でも外国投資家になり得ることです。外国の親会社の100%子会社である日本法人が買い手になる場合も、手続の要否を同じように確認します。買収のために日本で受け皿会社を作っても、外為法の確認は省けません。

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どんな取引が「対内直接投資等」になるか

外国投資家が行う次の行為は、「対内直接投資等」にあたります(外為法26条2項)。

  • 上場会社以外の会社の株式又は持分の取得(同項1号)
  • 上場会社の株式の取得で、密接関係者の分と合わせた保有割合が1%以上となるもの(同項3号、対内直接投資等に関する政令2条8項)。議決権の取得も1%が基準です(同項4号、同条10項)
  • 事業目的の実質的な変更など、会社の経営に重要な影響を与える事項への同意(同項5号)。財務省の資料は、外国投資家やその関係者が取締役・監査役に就任することへの同意を例に挙げています
  • 日本での支店等の設置(同項6号)
  • 日本の法人からの事業の譲受け、吸収分割や合併による事業の承継(同項8号)

非上場会社の株式取得には、上場会社のような1%の基準がありません。財務省の制度概要も、非上場会社では1株(端株を含む)以上の取得を事前届出の対象として示しています。少数出資だからといって、手続が不要になるわけではありません。

上場会社以外の会社の株式を、ほかの外国投資家から譲り受ける場合は、「特定取得」という別の類型になります(外為法26条3項)。こちらにも事前届出の制度があります(同法28条1項)。売主が外国の会社やファンドのときは、どちらの類型かを先に確かめます。

事前届出が必要になる場合

事前届出が必要かどうかは、主に投資先の事業と、投資家の国籍・所在国で決まります。

投資先が指定業種の事業を営んでいる

国の安全等の観点から定められた業種(指定業種)の事業を営む会社への投資は、事前届出の対象です(外為法27条1項、対内直接投資等に関する政令3条2項1号)。業種は、財務大臣と事業所管大臣が告示で定めています(対内直接投資等に関する命令3条3項)。財務省の制度概要が挙げる例には、次のものがあります。

  • 武器・航空機・宇宙開発・原子力関連の製造業、軍事転用可能な汎用品の製造業
  • 半導体製造装置、蓄電池、工作機械・産業用ロボットなどの製造業
  • 情報処理関連の機器・部品・ソフトウェアの製造業、情報サービス関連業
  • 電力・ガス・通信・上水道・鉄道・石油・放送・旅客運送などのインフラ関連業種
  • 警備業、農林水産業、航空運輸業、海運業

指定業種にあたるかは、定款の事業目的だけでなく、実際に営んでいる事業で判断します。投資先の子会社などが指定業種の事業を営む場合も含まれます。日本銀行の外為法Q&Aがこの点を明記しています。ソフトウェアや情報サービスは範囲が広く、IT企業への投資では特に丁寧な確認が必要です。

投資家の国籍・所在国が一定の国・地域以外

投資家の国籍・所在国が、命令の別表第一に掲げる国・地域以外であれば、投資先の業種にかかわらず事前届出の対象です(対内直接投資等に関する命令3条5項)。別表第一は財務省のページで公表されています。

判断の手がかり

上場会社については、財務省が「本邦上場会社の外為法における対内直接投資等事前届出該当性リスト」を公表しています。ただし財務省は、事前届出の要否は投資家が自ら判断するのが原則で、リストは判断の便宜のためのものとしています。

非上場会社にはこのリストがありません。投資先と子会社の事業の内容を聞き取り、告示と照らし合わせて判断します。財務省の投資先向け資料も、指定業種を営む会社が外国投資家から出資を受けるときは、その旨を投資家に伝えるよう呼びかけています。

届出の手続と待機期間

事前届出は、投資を行おうとする日の前6か月以内に行います(対内直接投資等に関する政令3条3項)。届出書は、日本銀行を経由して財務大臣と事業所管大臣に提出します(対内直接投資等に関する命令3条7項)。日本銀行は、オンラインシステムでの提出を勧めています。

外国の会社や非居住者の個人が届け出るときは、日本の居住者である代理人によって届け出なければなりません(対内直接投資等に関する政令3条4項)。海外の買い手は、日本側の代理人を早めに決めておきます。

30日の禁止期間と、その短縮・延長

届出をした外国投資家は、受理日から起算して30日を経過する日まで、投資を実行できません(外為法27条2項)。審査の必要がないと認められれば、この期間は短縮されます(同項ただし書)。短縮された届出は、実行できる日が日本銀行のホームページに掲載されます。

反対に、国の安全等の観点から審査が必要と認められると、期間は受理日から4か月まで延長されることがあります(同条3項)。関税・外国為替等審議会が4か月以内に意見を述べるのが難しいと申し出た場合は、5か月になります(同条6項)。審査の結果、投資内容の変更や中止を勧告・命令されることもあります(同条5項・10項)。

届出を怠った場合と、実行後の報告

届出が必要なのに届け出ずに投資した場合や、禁止期間の満了前に実行した場合は、措置命令の対象になり得ます。国の安全等に支障があると認められれば、取得した株式の処分などを命じられることがあります(外為法29条1項)。

届出をして投資を実行した後も、手続は終わりません。日本銀行の外為法Q&Aによると、株式の取得などをした日から45日以内に、実行報告を出す必要があります(外為法55条の8)。

財務省は、年末年始、大型連休の前、株主総会が集中する時期の前は届出が集中する傾向にあるとして、余裕を持った日程を求めています。

事前届出免除制度

一定の外国投資家は、株式・持分・議決権の取得などについて、事前届出をせずに投資できる場合があります(外為法27条の2第1項)。これを事前届出免除制度といいます。対象は株式の取得などの行為に限られ、経営への重要な影響を与える事項への同意(同法26条2項5号)は含まれません。

免除を使えない投資家

外為法違反で刑に処せられるなどしてから5年を経過しない者は使えません。外国の政府・政府機関・中央銀行など(外国政府等)や、外国政府等の情報収集活動に協力する義務を負う者も対象外です。外国政府等が議決権の50%以上を保有する法人なども同様です(対内直接投資等に関する政令3条の2第1項)。

守らなければならない基準

免除を使った外国投資家は、財務大臣と事業所管大臣が告示で定める基準を守る必要があります(外為法27条の2第1項)。主な内容は次のとおりです。

  • 投資先などの取締役・監査役に自ら就任せず、関係者も就任させないこと
  • 指定業種の事業の譲渡・廃止などの議案を、株主総会に提案しないこと
  • 指定業種の事業に関する、秘密として管理された技術関連情報を取得しないこと

基準に違反すると、遵守のための措置を勧告され、従わなければ命令の対象になります(同条3項・4項)。

コア業種と事後報告

指定業種のうち、国の安全等を損なうおそれが特に大きい業種は「コア業種」として別の告示で定められています。日本銀行の外為法Q&Aによると、非上場会社への投資で免除制度を使えるのは、コア業種以外の指定業種に限られます。上場会社のコア業種では、一般の外国投資家は密接関係者と合わせて10%未満の場合に限り使え、追加の基準も守る必要があります(対内直接投資等に関する政令3条の2第2項3号)。

免除制度を使ったときは、投資を行った日から45日以内に事後報告を出します。非上場会社への投資では、出資比率にかかわらず事後報告が必要です。

実務上の分かれ目は、買収後に取締役を送り込むかどうかです。役員の派遣を予定しているなら、免除の基準を満たせないため、事前届出を前提に日程を組みます。対象会社が非上場でコア業種を営んでいる場合も、同じく事前届出が前提です。

事後報告

事前届出が不要な対内直接投資等でも、実行後に報告が必要な場合があります(外為法55条の5第1項)。事前届出をした投資は、この事後報告の対象外です(同項ただし書)。

日本銀行の外為法Q&Aによると、事後報告の対象は、投資家の国籍・所在国が日本又は別表第一の国・地域で、投資先が指定業種を営まないもの(又は免除制度を利用したもの)です。株式取得では、例えば密接関係者と合わせた出資比率や議決権比率が10%以上となった場合などが対象とされています。

報告は、投資を行った日から45日以内に、日本銀行を経由して提出します(対内直接投資等に関する命令6条の2)。外国の会社や非居住者の個人は、日本の居住者である代理人によって報告します(対内直接投資等に関する政令6条の3第2項)。

2027年1月4日施行の改正

2026年6月5日に公布された外為法の改正法が、2027年1月4日に施行されます(一部は公布日に施行済み)。財務省の概要資料が示す主な改正点は次のとおりです。

  • リスク軽減措置の明確化:国の安全等を損なうリスクをなくすための措置を、届出事項として明確にします。届け出た措置を変えるときは、変更の届出が必要になります。
  • 間接的な投資の捕捉:日本企業の株式を持つ外国法人を別の外国投資家が買収するなどして、日本企業の株式を間接的に取得する行為が規制の対象に加わります。
  • 外国政府等の影響下での投資の捕捉:外国政府等の支配・影響下で投資を行う国内の投資家を、外国投資家とみなして事前届出等の対象とします。

海外のグループ会社ごと買収する案件では、日本の子会社の株式の間接取得として届出が必要になる場合があります。クロージングが2027年1月4日以降になる案件は、改正後の規定と政省令で要否を確かめます。

案件の日程への組み込み方

外為法の確認は、基本合意の段階から始めるのが理想です。対象会社の事業が指定業種・コア業種にあたるかは、デューデリジェンスで確認する事項に入れます。

株式譲渡契約では、禁止期間の経過(短縮を含む)をクロージングの前提条件にしておくのが基本です。審査の延長に備えて、契約の終了期限(ロングストップ日)にも余裕を持たせます。

日本への進出の形(支店・子会社)と契約の準拠法は「外国企業の日本進出」で解説しています。M&Aの進め方は「M&A・コーポレート」、国際案件全般は「国際・渉外法務」をご覧ください。

今すぐできること

  1. 買い手(日本の受け皿会社を含む)が外国投資家にあたるかを、株主と役員の構成から確認する。
  2. 取引の形(非上場株式の取得、上場株式の取得、事業の譲受け、役員選任への同意など)を整理する。
  3. 対象会社と子会社が実際に営む事業を聞き取り、指定業種・コア業種にあたるかを告示で確認する。
  4. 投資家の国籍・所在国が、別表第一の国・地域に入っているかを確認する。
  5. 事前届出・免除・事後報告のどれになるかを決め、日本の居住者である代理人を決める。
  6. 30日の禁止期間と延長の可能性を見込んで、署名日・クロージング日・ロングストップ日を組む。
  7. 実行後45日以内の実行報告・事後報告の期限を、クロージング後の手続の一覧に入れる。

弁護士に相談すべきタイミング

  • 対象会社の事業が指定業種・コア業種にあたるか、判断がつかない。
  • 買収後に取締役を送り込む、又は事業の再編を予定している。
  • 買い手の株主に、外国の政府や政府系の投資機関が含まれている。
  • 届け出ないまま株式を取得していたことが分かった。
  • クロージングが2027年1月4日以降になり、改正後の規定の適用を確認したい。

当事務所は、日本と海外のあいだのM&A・出資について、日本語と英語でご相談をお受けしています。お問い合わせページからご連絡ください。

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  • ・日本・ニューヨーク州の弁護士 阿部祐介が担当します
  • ・オンライン(Zoom等)・来所(東京・大手町)どちらも可
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よくあるご質問

非上場の日本企業に5%だけ出資する場合も、届出が必要ですか?

非上場会社の株式取得には1%の基準がなく、1株の取得でも対内直接投資等にあたります(外為法26条2項1号)。投資先が指定業種を営んでいれば、原則として事前届出が必要です。コア業種以外の指定業種なら免除制度を使える場合がありますが、その場合も事後報告が必要です。

届出をしてから、どのくらいで買収を実行できますか?

受理日から起算して30日を経過するまでは実行できません(外為法27条2項)。審査の必要がないと認められれば短縮されます。審査が必要な場合は、4か月(場合により5か月)まで延長されることがあります(同条3項・6項)。

日本の子会社を通じて買収すれば、外為法の届出はいりませんか?

外国法人などが議決権の50%以上を保有する日本の会社も、外国投資家にあたります(外為法26条1項3号)。日本の子会社を買い手にしても、手続の要否は同じように確認する必要があります。

事前届出免除制度は、どの外国投資家でも使えますか?

使えません。外国政府等やその支配下にある法人、外為法違反による刑の執行などから5年を経過しない者などは除かれます(対内直接投資等に関する政令3条の2第1項)。使える場合も、役員に就任しない、非公開の技術情報を取得しないなどの基準を守る必要があり、非上場のコア業種の会社への投資には使えません。

届出が必要だったのに、出さずに株式を取得してしまいました。

国の安全等に支障があると認められると、株式の処分などを命じられることがあります(外為法29条1項)。財務省は、事前届出を怠ったことが判明した場合、外国投資家が速やかに事案調査票を作成して連絡するよう求めています。事実関係を整理し、早めに対応を検討します。

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※ 本記事は法律の一般的な知識を提供するものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な法的問題については、弁護士にご相談ください。

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