M&A

M&A・コーポレート

スキームの選択から契約交渉、クロージングまで。中小企業・スタートアップのM&Aと事業承継を中心にご支援します。

要点

  • 譲渡制限株式を譲り渡すには会社の承認が要る。株主は会社に承認の決定を請求し(会社法136条)、決定は株主総会、取締役会設置会社では取締役会の決議による(同139条1項、定款に別段の定めがある場合を除く)。
  • 事業の全部または重要な一部の譲渡には、効力発生日の前日までに株主総会の承認が必要。重要な一部かどうかは譲り渡す資産の帳簿価額が総資産額の5分の1を超えるかが基準(会社法467条1項2号)。この決議は特別決議(同309条2項11号)。
  • 一定規模の株式取得は公正取引委員会への事前届出が要る。国内売上高合計額が取得側200億円・被取得側50億円を下回らない範囲内で政令の定める額を超えることが入口(独占禁止法10条2項)。議決権の保有割合の要件は、百分の二十を下回らない範囲内において政令で定める数値を超えること(同項)。
  • 表明保証は範囲だけでなく、補償の上限・請求期間・知っていた事項の扱いをセットで設計する。売り手側は、自分が事実として確認できない事項まで無限定に保証しない形に整える。
  • 相手が現れる前にできる準備がある。株主名簿と登記の整合、譲渡制限の有無、ストックオプションの処理、主要契約の承諾条項の点検は、打診を受ける前に済ませられる。

イントロダクション

M&Aは、売る側にとっても買う側にとっても、多くの場合は一生に何度もない取引です。一方で、進め方の型はある程度決まっています。どの段階で何を決め、何を書面に落とし、どの社内手続を踏むのか。この見取り図を最初に持てているかどうかで、交渉の主導権も、後から揉めるかどうかも変わります。

当事務所は、M&A・コーポレートを中心的な取扱分野としています。スキームの選択から、デューデリジェンス、契約の作成と交渉、クロージングに向けた社内手続まで、一貫してご相談いただけます。

対応領域

・スキームの選択(株式譲渡、事業譲渡、会社分割、合併の比較検討) ・法務デューデリジェンスの実施、および相手方から受けるデューデリジェンスへの対応 ・株式譲渡契約(SPA)、事業譲渡契約の作成・レビュー・交渉 ・表明保証と補償条項の設計 ・株主間契約、投資契約 ・クロージングに向けた社内手続(株主総会・取締役会)の設計 ・独占禁止法上の企業結合届出の要否判断 ・事業承継を目的としたM&A

規模については正直にお伝えします。上場会社どうしの大型統合のように多人数のチーム編成を前提とする案件は、案件の規模と性質に応じて他の専門家と連携する形をとります。当事務所が単独で最後まで伴走しやすいのは、中小企業やスタートアップの株式譲渡、事業承継、事業の切り出しといった案件です。

手続で見落とされやすい点

M&Aで後から問題になりやすいのは、交渉の中身よりも、踏むべき手続を飛ばしていたという類の論点です。代表的なものを挙げます。

譲渡制限株式の承認。定款で株式に譲渡制限が付いている場合、株主が株式を他人に譲り渡そうとするときは、会社に対して承認するか否かの決定を請求することになります(会社法136条)。承認するか否かの決定は、株主総会の決議によります。取締役会設置会社であれば取締役会の決議です。ただし定款に別段の定めがあるときはそれによります(会社法139条1項)

事業の重要な一部の譲渡。事業の全部を譲渡する場合はもちろん、事業の重要な一部を譲渡する場合にも、効力発生日の前日までに株主総会の承認が必要です。ここでいう重要な一部かどうかは、譲り渡す資産の帳簿価額が総資産額の5分の1を超えるかどうかが一つの基準になります。定款でこれを下回る割合を定めることもできます(会社法467条1項2号)。そしてこの決議は特別決議です(会社法309条2項11号)

企業結合の届出。一定の規模を超える株式取得については、公正取引委員会への事前届出が必要になります。届出義務の入口は当事会社の国内売上高合計額で、株式を取得する側が200億円、取得される側が50億円をそれぞれ下回らない範囲内で政令が定める金額を超えることが要件です(独占禁止法10条2項)。議決権の保有割合については、取得後に保有することとなる議決権の割合が、百分の二十を下回らない範囲内において政令で定める数値を超えることが要件です。中小案件では届出不要となることが多いものの、買い手が大きい場合は最初に確認しておくべき点です。

ご相談の例と、対応の進め方

以下は、こうしたご相談があった場合にどう進めるかを示したものであり、過去の受任実績を示すものではありません。

ご相談の例1 買収の打診を受けたスタートアップ

事業会社から買収の打診を受けたが、何から手をつけてよいか分からないというご相談です。

まず、打診の中身がどの段階のものかを整理します。関心の表明にとどまるのか、価格や条件を含む意向表明なのかで、次に取るべき行動が変わります。秘密保持契約を交わす段階であれば、情報開示の範囲と、交渉が流れた場合の取扱いを確認します。

並行して、自社側の準備状況を点検します。株主名簿と登記の整合、譲渡制限の有無、ストックオプションの処理、主要な契約に相手方の承諾を要する条項が入っていないか。この点検を先に済ませておくと、デューデリジェンスで想定外の指摘を受けて価格交渉が不利になる展開を避けやすくなります。

契約段階では、表明保証の範囲、違反した場合の補償の上限と期間、クロージングまでの誓約事項、独占交渉の有無を、経営陣が実際に守れる水準で設計します。

ご相談の例2 後継者のいない会社を第三者へ譲渡したい

事業は続いているが後継者がおらず、従業員と取引先を残す形で会社を譲りたいというご相談です。

はじめに、株式譲渡と事業譲渡のどちらが目的に合うかを検討します。会社をそのまま引き継いでもらうのか、特定の事業だけを切り出すのか。従業員の雇用や許認可の扱い、簿外債務のリスクの引き受け方が、この選択で変わります。

株主構成が分散している場合や、相続で名義が整理されていない場合は、そこから着手します。買い手にとって、株式を確実に取得できるかどうかは価格以前の問題だからです。

契約では、譲渡後の役員の処遇、従業員の雇用維持に関する取り決め、譲渡人が負う競業避止の範囲を明確にします。口頭の約束のままにせず、書面に落とすことをお勧めしています。

ご依頼の流れ

初回のご相談では、案件の段階と、決めなければならない論点を整理してお伝えします。そのうえで対応の方針と費用を書面でご提示し、ご納得いただいてから着手します。

M&Aは相手方のあるスケジュールで動くため、着手のタイミングが遅れると選択肢が狭まります。打診を受けた段階、あるいは検討を始めた段階でご相談いただくのが最も効果的です。

お問い合わせ

初回30分のご相談は無料です。日本語と英語のいずれでもご相談いただけます。オンラインでも対応しています。

よくあるご質問

Q.株式譲渡と事業譲渡は、どちらを選ぶべきですか。
目的によります。会社をそのまま引き継いでもらうなら株式譲渡、特定の事業だけを切り出すなら事業譲渡が基本の形です。株式譲渡は手続が比較的簡素で許認可も原則としてそのまま残りますが、買い手は簿外債務を含めて会社を引き受けることになります。事業譲渡は引き継ぐ対象を選べる一方、契約や許認可を個別に移す必要があり、事業の重要な一部の譲渡にあたる場合は株主総会の特別決議が必要です(会社法467条1項2号、309条2項11号)。実際にはどちらが有利かは価格や税務とも絡むため、初期段階で並べて検討します。
Q.法務デューデリジェンスは、どこまで見るのですか。
案件の規模と目的に応じて範囲を決めます。一般には、株式と株主構成、組織と機関決定、主要な契約、許認可、労務、知的財産、係争と潜在紛争、コンプライアンスを見ます。すべてを同じ深さで見るのではなく、その会社にとって価値の源泉がどこにあるか、価格に響くリスクがどこにあるかで濃淡をつけます。範囲と深さは着手前にご相談のうえ決めます。
Q.表明保証は、どこまで入れるべきですか。
売り手と買い手で立場が正反対になる部分です。買い手は広く、売り手は狭くしたいのが通常です。実務的に大事なのは、範囲そのものよりも、違反した場合の補償の上限、請求できる期間、そして知っていた事項の扱いを合わせて設計することです。売り手側であれば、自分が事実として確認できない事項まで無限定に保証しない形に整えます。
Q.譲渡制限株式があると、何が違いますか。
株主が株式を他人に譲り渡そうとするときに、会社に対して承認するか否かの決定を請求する必要があります(会社法136条)。承認の決定は株主総会の決議、取締役会設置会社では取締役会の決議によります。定款に別段の定めがあればそれによります(会社法139条1項)。株主が分散している会社では、この承認手続と株主名簿の整理を先に済ませておかないと、クロージングの直前で止まることがあります。
Q.公正取引委員会への届出は必要ですか。
多くの中小案件では不要ですが、買い手の規模によっては必要になります。株式取得についての届出義務は当事会社の国内売上高合計額を入口としており、取得する側が200億円、取得される側が50億円をそれぞれ下回らない範囲内で政令が定める金額を超えることが要件です(独占禁止法10条2項)。議決権の保有割合については、取得後に保有することとなる議決権の割合が、百分の二十を下回らない範囲内において政令で定める数値を超えることが要件です。届出が必要な場合は待機期間があるため、スケジュールに影響します。最初に確認します。
Q.海外の買い手や売り手が相手でも対応できますか。
対応できます。日本語と英語のいずれでも交渉と契約に対応します。ニューヨーク州の弁護士資格も有しているため、英文契約や米国側の実務を踏まえた交渉方針の設計にも対応できます。ただし米国法そのものに関する正式な意見や米国での訴訟代理は、米国の現地弁護士と連携して進めます。
Q.まだ相手も決まっていない段階でも相談できますか。
その段階のご相談が最も効果があります。株主名簿と登記の整合、譲渡制限の有無、主要契約に相手方の承諾を要する条項がないか、といった点検は、相手が現れる前に済ませておけるものです。先に整えておくと、デューデリジェンスで想定外の指摘を受けて価格交渉が不利になる展開を避けやすくなります。
Q.事業承継としてのM&Aで、特に気をつける点はありますか。
従業員と取引先をどう残すかが、価格と同じかそれ以上に重要になることが多い点です。譲渡後の役員の処遇、雇用の維持に関する取り決め、譲渡人が負う競業避止の範囲は、口頭の了解にせず書面にしておくことをお勧めしています。また相続を経て株式の名義が整理されていない場合は、そこから着手します。買い手にとって、株式を確実に取得できるかどうかは価格以前の問題だからです。
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