企業法務弁護士監修済
Q.AIで生成した画像をロゴとして商標登録しようとしたら拒否されました。AI生成物は商標登録できないのですか?
A.
AIで生成したこと自体は拒絶理由になりません。識別力がない(3条1項)か、他人の登録商標に似ている(4条1項11号)ことが原因の可能性が高く、意見書・補正書で反論できます。
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AIで生成したことだけを理由に、商標登録が拒絶されることはありません。商標法の登録要件(3条・4条)には、誰がどのような方法で作ったかを問う規定がないからです。拒絶された場合は、デザインに識別力がない(ありふれている)と判断されたか(商標法3条1項)、先に登録された他人の商標に似ていると判断された(同法4条1項11号)可能性が高いといえます。拒絶理由通知書が届いたら、指定された期間内に意見書や補正書を出して反論できます(同法15条の2・68条の40)。
こんな場面で問題になります
・画像生成AIで作った新サービスのロゴを出願したところ、特許庁から拒絶理由通知書が届いた。
・デザイン会社に依頼したロゴが、実はAIで生成されたものだと後から分かった。
・AIで作ったロゴを商品に使い始めたが、似たロゴを使う他社があると取引先から指摘された。
・海外展開に向けてロゴを商標登録したいが、AIサービスの利用規約で権利がどう扱われるか分からない。
1. AIで作ったこと自体は拒絶理由にならない
商標法上の「商標」は、人の知覚で認識できる文字、図形、記号、立体的形状、色彩、音などのうち、業として商品や役務(サービス)に使用するものをいいます(商標法2条1項)。この定義には、商標を誰が作ったか、どのように作ったかという要件は含まれていません。
審査官が商標登録を拒絶できるのは、3条や4条1項などに定める理由に当たる場合です(同法15条1号)。そのため、「AIで生成した」という事実だけで拒絶されることはありません。拒絶理由通知書には、どの条文に当たるとされたかが書かれています。まずはそこを確認することが出発点です。
2. よくある拒絶理由①:識別力がない(3条1項)
商標は、自社の商品やサービスを他社のものと区別する目印です。そのため、目印として働かない商標は登録できません。商標法3条1項は、次のような商標を登録できないものとしています。
・商品やサービスの普通名称を、普通の方法で表示しただけのもの(1号)
・その商品やサービスについて慣用されているもの(2号)
・産地、品質、効能、用途などを、普通の方法で表示しただけのもの(3号)
・ありふれた氏や名称を、普通の方法で表示しただけのもの(4号)
・極めて簡単で、かつ、ありふれた標章だけのもの(5号)
・その他、需要者が誰の商品やサービスか認識できないもの(6号)
AIに「シンプルなロゴ」「〇〇らしいアイコン」と指示すると、よく見かける図形や、商品の特徴をそのまま描いたデザインになることがあります。こうしたデザインは、3号・5号・6号の問題を指摘されやすい傾向があります。なお、3号から5号に当たる商標でも、使われた結果として需要者が誰の商品か認識できるようになったものは、登録を受けられます(同条2項)。
3. よくある拒絶理由②:他人の商標と似ている(4条1項)
先に出願された他人の登録商標と同一または類似で、指定する商品やサービスも同一または類似の場合、その商標は登録できません(商標法4条1項11号)。AIは大量の画像をもとに生成するため、既存のロゴに似たデザインが出てくることがあります。出願前に、J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)などで類似の登録商標がないか調べることが大切です。
先行する登録商標がある場合でも、その商標権者の承諾を得ており、かつ、商品やサービスの出所に混同が生じるおそれがないときは、11号は適用されません(同条4項)。
このほか、次のような理由で拒絶されることもあります。
・公の秩序や善良の風俗を害するおそれがある商標(4条1項7号)
・他人の肖像や、一定の他人の氏名・名称を含む商標(同項8号)
・他人の商品やサービスを表すものとして広く知られている商標と同一・類似で、同一・類似の商品などに使うもの(同項10号)
・他人の商品やサービスと混同を生じるおそれがある商標(同項15号)
・国内外で広く知られた他人の商標と同一・類似で、不正の目的で使うもの(同項19号)
4. 拒絶理由通知書が届いたときの対応
審査官は、拒絶の査定をしようとするときは、出願人に拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を出す機会を与えなければなりません(商標法15条の2)。この期間内に、次のような対応ができます。
・意見書:識別力がある理由や、引用された商標とは似ていない理由を説明します。
・補正書:指定商品・役務を減らすなどして、拒絶理由を解消します(同法68条の40第1項)。
・承諾書の取得:先行する登録商標の権利者から承諾を得られれば、4条4項による登録を目指せる場合があります。
意見書や補正書を出しても拒絶の査定を受けたときは、査定の謄本が送達された日から3か月以内に、拒絶査定不服審判を請求できます(同法44条1項)。
商標のデザインを変える補正は、要旨の変更に当たるときは却下されます(同法16条の2第1項)。デザインを変えたい場合は、新たに出願し直すことになります。
5. 登録できても残る問題:著作権
商標登録ができても、それだけでロゴを安心して使えるとは限りません。
文化庁の文化審議会著作権分科会法制度小委員会が2024年3月15日に公表した「AIと著作権に関する考え方について」は、AI生成物が著作物かどうかは個別の事情に応じて判断されるとしています。AIそのものは著作者になりません。著作物と判断された場合は、AIを利用して創作した人が著作者になるという考え方が示されています。この文書は、法的な拘束力を持つものではないとされています。
著作権法上の「著作物」は、思想または感情を創作的に表現したものです(著作権法2条1項1号)。単純な指示で生成しただけのロゴは、著作物と認められない可能性があります。その場合、他社に同じようなデザインを使われても、著作権で止めることは難しくなります。
逆に、生成されたロゴが既存の他人の著作物に似ていた場合には、問題が生じます。同じ文書は、AI生成物でも、既存の著作物との類似性と依拠性が認められれば、著作権侵害になり得るとしています。商標法にも、登録商標の使用が、出願日より前に生じた他人の著作権と抵触するときは、その抵触する部分について使用できないという定めがあります(商標法29条)。
6. AIサービスの利用規約も確認する
画像生成AIのサービスごとに、生成物の権利の帰属や商用利用の可否、利用者の責任の範囲が利用規約で定められています。無料プランと有料プランで扱いが違うこともあります。ロゴとして使う前に、生成した時点の規約を保存しておくと、後で確認が必要になったときに役立ちます。
7. デザインを外注するときの契約
ロゴの制作を外部に依頼する場合は、AIを使うかどうかを事前に確認し、契約書に書いておくことが考えられます。AIを使う場合は、どのサービスを使うか、その利用規約で商用利用が認められているかも確認の対象です。
あわせて、納品物の著作権を誰に帰属させるか、第三者の権利を侵害していないことを制作者がどこまで保証するか、問題が起きたときに誰が対応するかを定めておくと、後のトラブルを防ぎやすくなります。商標出願の前に、制作者から制作の経緯を聞き取っておくことも有効です。
今すぐできること
・拒絶理由通知書に書かれた条文(3条1項何号か、4条1項何号か)と、応答の期限を確認する。
・引用された先行商標の登録内容(図形、指定商品・役務)を確認し、自社ロゴとの違いを整理する。
・ロゴを生成したAIサービス名、生成日、使ったプロンプト、その時点の利用規約を記録して保存する。
・人の手で加えた修正があれば、その経緯とデータを残しておく。
・新しくロゴを作る場合は、出願前にJ-PlatPat(特許情報プラットフォーム)などで類似の商標を調べる。
・デザインを外注した場合は、AIを使ったかどうかと、権利の帰属を契約書で確認する。
弁護士に相談すべきタイミング
・拒絶理由通知書が届き、意見書で反論できるか判断がつかない。
・拒絶査定を受け、不服審判を請求するか検討している。
・自社のロゴが他社の商標や著作物に似ていると指摘された、または警告書が届いた。
・AIで作ったロゴを、海外を含めて広く展開する予定がある。
・デザイン会社や制作会社との契約で、AI利用と権利の帰属をどう定めるべきか迷っている。
よくあるご質問
Q. AIで作ったロゴは、商標登録できないのですか?
できないわけではありません。商標法の登録要件に、作成方法を問う規定はありません(商標法2条1項・3条・4条)。識別力があり、他人の商標と似ていなければ、登録を受けられる可能性があります。
Q. 拒絶理由通知書には、いつまでに応答すればよいですか?
通知書に記載された指定期間内に、意見書や補正書を提出します(商標法15条の2)。期間は通知書で確認してください。
Q. 拒絶査定を受けたら、もう登録できませんか?
査定の謄本が送達された日から3か月以内に、拒絶査定不服審判を請求できます(商標法44条1項)。
Q. 商標登録できれば、AIで作ったロゴを自由に使えますか?
そうとは限りません。ロゴが他人の著作物と似ていて著作権と抵触する場合、登録商標でもその部分は使えないと定められています(商標法29条)。
Q. AIで作ったロゴに著作権はありますか?
個別の事情によります。文化庁の資料は、AI生成物の著作物性は、人による指示の内容や加筆・修正の有無などを踏まえて個別に判断されるという考え方を示しています。
※ 本記事は法律の一般的な知識を提供するものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な法的問題については、弁護士にご相談ください。
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