2026年6月1日、改正資金決済法(資金決済に関する法律)が施行されました。金融のデジタル化の進展に対応し、利用者保護を確保しつつイノベーションを促進することを目的とした改正で、特にステーブルコインと暗号資産サービスの分野に大きな影響を与えます。本記事では改正の4つの柱と、事業者が押さえるべき実務対応を解説します。
改正の背景と全体像
資金決済法(平成21年法律第59号)は、2023年施行の改正で電子決済手段(ステーブルコイン)の法的枠組みを世界に先駆けて整備しました。今回の2026年6月改正はその実務的なボトルネックを解消し、国内でのステーブルコイン発行・流通を後押しする位置づけです。Web3関連の規制動向はEU AI法と高リスクAI規制と同様、日本企業の海外展開にも関わります。
| 改正の柱 | 内容 |
|---|---|
| 仲介業の新設 | 媒介のみを行う「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」を創設 |
| 信託型SCの柔軟化 | 特定信託受益権の裏付資産の運用方法を緩和 |
| 外国SCの認定 | 同等性が確保された外国発行ステーブルコインを電子決済手段として明示 |
| 国内保有命令 | 暗号資産交換業者等に資産の国内保有命令を導入 |
① 電子決済手段・暗号資産サービス仲介業の新設
これまで暗号資産やステーブルコインの「媒介のみ」を行う事業者も、原則として交換業や電子決済手段等取引業の重い登録が必要でした。改正により、媒介のみを業として行う場合を対象とする「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」が新設され、より軽い規律で参入できるようになります。フィンテック事業者やプラットフォーマーの参入障壁を下げる狙いです。
② 信託型ステーブルコインの裏付資産運用の柔軟化
従来、信託型ステーブルコインの裏付資産は要求払預貯金での保全が求められ、運用益を得にくい設計でした。改正により特定信託受益権の定義が見直され、一定の条件のもとで要求払預貯金以外の方法(国債等)での管理・運用が認められます。これにより発行体の収益性が改善し、国内発行が実務的に可能になります。
③ 外国発行ステーブルコインの取扱い
日本の法制度と同等性が確保された外国法令に基づく信託受益権を、国内法上の電子決済手段として明示的に位置づけました。これにより、海外発行の主要ステーブルコインが日本国内で適法に流通する道が開かれ、多国籍企業のクロスボーダー決済にメリットがあります。
④ 資産の国内保有命令とクロスボーダー収納代行
利用者保護の観点から、暗号資産交換業者および電子決済手段等取引業者に対する「資産の国内保有命令」が新設されました。事業者破綻時に利用者資産が海外に流出するリスクを抑えます。あわせて、クロスボーダー収納代行についても、適用除外類型に該当しない限り資金移動業の登録が求められることが明確化され、マネーロンダリング対策が強化されています。
事業者が押さえるべき実務対応
- 業登録区分の再確認:自社サービスが仲介業・交換業・電子決済手段等取引業のいずれに該当するか整理する
- 裏付資産の運用方針見直し:信託型ステーブルコインの発行体は新たに認められる運用方法を検討する
- AML/CFT体制の点検:クロスボーダー収納代行や国内保有命令を前提に、マネロン対策とガバナンスを見直す
暗号資産・ステーブルコイン事業の登録区分の判断やスキーム設計は、金融規制に精通した弁護士への早期相談が有効です。企業のコンプライアンス体制整備については下請法・フリーランス保護の動向もあわせてご確認ください。
一次情報
- 金融庁「資金決済に関する法律の改正」: https://www.fsa.go.jp/
- e-Gov 法令検索「資金決済に関する法律」: https://laws.e-gov.go.jp/law/421AC0000000059