106万円の壁撤廃へ|2026年10月から社会保険適用拡大、パート・アルバイトへの影響を弁護士が解説
労働問題最終更新: 2026-04-26約5分で読めます

106万円の壁撤廃へ|2026年10月から社会保険適用拡大、パート・アルバイトへの影響を弁護士が解説

この記事のポイント

  • 2026年10月から従業員51人以上の企業で週20時間以上働くパート等に社会保険が適用される
  • いわゆる「年収106万円の壁」が実質的に撤廃され、約65万人が新たに適用対象となる
  • 企業の社会保険料負担は約15%増加する見込みで、中小企業への影響が大きい
  • 配偶者の扶養(第3号被保険者)から外れる労働者は手取り減少の可能性があるが、将来の年金額は増加する
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改正の背景と概要

2024年に成立した健康保険法および厚生年金保険法の改正(令和6年法律第52号)に基づき、2026年10月1日から社会保険の適用対象が大幅に拡大されます。これまで「年収106万円の壁」として知られていた社会保険加入の収入要件が見直され、短時間労働者(パート・アルバイト)の社会保障がより手厚くなります。

この改正は、2016年の501人以上企業への適用拡大、2022年の101人以上企業への適用拡大に続く段階的拡大の第3段階に位置づけられます。

適用拡大の具体的内容

新たな適用基準

2026年10月以降、以下の要件をすべて満たす短時間労働者は、厚生年金保険および健康保険の被保険者となります。

要件内容
企業規模従業員(厚生年金被保険者)51人以上の企業
週所定労働時間20時間以上
月額賃金8.8万円以上(年収約106万円に相当)
雇用期間2か月を超える見込み
学生除外昼間学生でないこと

従来は従業員101人以上の企業が対象でしたが、この基準が51人以上に引き下げられることで、新たに約65万人の短時間労働者が社会保険に加入することになります。

「106万円の壁」とは何だったのか

「106万円の壁」とは、年収が約106万円(月額8.8万円×12か月)を超えると社会保険料の負担が生じ、手取りが減少する現象を指す通称です。この壁の存在により、多くのパート労働者が就業調整(労働時間を抑えて壁を超えないようにすること)を行ってきました。

今回の改正では、企業規模要件の引き下げにより、これまで壁を意識していなかった中小企業のパート労働者も適用対象となるため、実質的に壁が撤廃される方向に向かっています。

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根拠法令

本改正の根拠となる主な条文は以下のとおりです。

法令条文内容
厚生年金保険法第12条5号短時間労働者の適用除外要件
健康保険法第3条1項9号短時間労働者の被保険者の定義
厚生年金保険法施行令附則第46条企業規模要件の経過措置
年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律令和2年法律第40号段階的適用拡大の根拠

企業への影響

社会保険料負担の増加

社会保険料は労使折半で負担します。企業が新たに負担する保険料率の目安は以下のとおりです。

保険種別企業負担率(概算)
厚生年金保険料9.15%(標準報酬月額に対して)
健康保険料約5%(協会けんぽの場合、都道府県により異なる)
介護保険料約0.8%(40歳以上の場合)
合計約15%

月額賃金8.8万円のパート従業員1人あたり、企業の追加負担は月額約13,200円(年間約15.8万円)となります。従業員51〜100人規模の企業にとっては、パート従業員が多いほど負担が大きくなります。

企業が取るべき対応

  1. 対象者の洗い出し: 週20時間以上勤務するパート・アルバイトのリストを作成
  2. 社会保険料の試算: 新たな負担額をシミュレーション
  3. 従業員への説明: 手取り額の変化と将来の年金増額について丁寧に説明
  4. 届出手続き: 日本年金機構への資格取得届の提出(施行日から5日以内)
  5. 就業規則の見直し: 必要に応じて労働条件の整理

労働者への影響

手取り減少と将来の年金増加

社会保険に加入することで、労働者にも保険料負担が生じます。

年収社会保険料(本人負担・年額概算)手取り減少額将来の年金増加(年額概算)
106万円約15万円▲約15万円+約5.8万円/年(65歳から終身)
120万円約17万円▲約17万円+約6.5万円/年
130万円約18.5万円▲約18.5万円+約7.1万円/年

短期的には手取りが減少しますが、厚生年金の受給権を得ることで、老後の年金額が国民年金のみの場合と比べて大幅に増加します。また、傷病手当金出産手当金など、健康保険の給付も受けられるようになります。

配偶者の扶養から外れる影響

現在、配偶者の社会保険の第3号被保険者(扶養)として保険料を負担していない方は、自ら社会保険に加入することで扶養から外れます。これにより:

  • 健康保険料: 新たに本人負担が発生
  • 年金保険料: 第3号被保険者から第2号被保険者へ変更(保険料負担あり、ただし年金額増加)
  • 配偶者手当: 企業によっては扶養手当の支給対象外になる可能性

将来の展望

政府は、企業規模要件の完全撤廃も視野に入れています。現行の段階的拡大のスケジュールは以下のとおりです。

施行年企業規模要件対象者数(累計)
2016年10月501人以上約25万人
2022年10月101人以上約45万人
2026年10月51人以上約65万人(新規)
将来(検討中)規模要件撤廃さらに数百万人

最終的には企業規模にかかわらず、週20時間以上働くすべての労働者が社会保険に加入する制度が目指されています。これは「働き方に中立な社会保障制度」の実現に向けた重要な改革です。

実務上の注意点

  • 施行日(2026年10月1日)より前に、対象者への個別通知と説明会の実施を推奨
  • 就業調整を希望する従業員への対応(労働時間の変更等)は労使間の十分な協議が必要
  • 社会保険の資格取得届の届出漏れには罰則(6か月以下の懲役または50万円以下の罰金)がある(厚生年金保険法第102条)
  • 既に適用対象となっている企業(101人以上)は今回の改正で変更なし

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*法律のミカタ編集部 | 2026年4月26日公開*

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※ 本記事は法律の一般的な知識を提供するものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な法的問題については、弁護士にご相談ください。

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