改正育児・介護休業法の全体像
2026年4月1日、改正育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)が施行されました。本改正は、少子化対策と仕事・育児の両立支援を柱とし、子育て世代の労働者がより柔軟に働ける環境を整備することを目的としています。
今回の改正は多岐にわたりますが、特に企業の人事・労務担当者と子育て中の労働者に大きな影響を及ぼす項目を中心に解説します。
子の看護休暇の対象拡大と取得事由の追加
対象年齢の引き上げ
改正前の育児・介護休業法では、子の看護休暇の対象は「小学校就学の始期に達するまでの子」(=小学校入学前)に限定されていました。改正後は、対象が小学校3年生修了時までに拡大されます。
| 項目 | 改正前 | 改正後(2026年4月〜) |
|---|---|---|
| 対象となる子の年齢 | 小学校入学前 | 小学校3年生修了まで |
| 取得可能日数 | 子1人:年5日、2人以上:年10日 | 変更なし |
| 名称 | 子の看護休暇 | 子の看護等休暇 |
取得事由の拡充
従来は、子の負傷・疾病の世話および予防接種・健康診断の付き添いに限られていた取得事由に、以下が追加されました。
- 感染症に伴う学級閉鎖等(学校保健安全法第20条に基づく出席停止・臨時休業)
- 入園式、卒園式、入学式等の行事参加
これにより、インフルエンザや新型コロナウイルスによる学級閉鎖の際にも看護等休暇を取得できるようになり、共働き世帯の実態に即した運用が可能となります。
3歳〜小学校入学前の子を持つ労働者への柔軟な働き方措置
事業主の義務
今回の改正の目玉の一つが、3歳から小学校入学前の子を養育する労働者に対する「柔軟な働き方を実現するための措置」の義務化です(改正育児・介護休業法第23条の3)。
事業主は、以下の選択肢の中から2つ以上の措置を講じ、労働者がその中から1つを選択できるようにしなければなりません。
| 措置の選択肢 | 内容 |
|---|---|
| 始業時刻等の変更 | フレックスタイム制、時差出勤等 |
| テレワーク | 月10日以上利用可能とすること |
| 短時間勤務制度 | 1日の所定労働時間を原則6時間とする措置等 |
| 保育施設の設置運営等 | 事業所内保育所の設置、ベビーシッター費用の補助等 |
| 新たな休暇の付与 | 養育のための休暇(年10日以上)の付与 |
事業主は措置を講じる際、過半数労働組合(または過半数代表者)の意見聴取が義務付けられています。また、措置の内容は労働者に対して個別に周知し、意向を確認する義務もあります。
所定外労働の免除(残業免除)の対象拡大
改正内容
育児・介護休業法第16条の8に基づく所定外労働の制限(残業免除)を請求できる対象が拡大されました。
| 項目 | 改正前 | 改正後(2026年4月〜) |
|---|---|---|
| 対象となる子の年齢 | 3歳未満 | 小学校入学前 |
| 請求方法 | 1回の請求につき1か月以上1年以内 | 変更なし |
これにより、3歳以上の子を持つ労働者も残業免除を請求できるようになり、保育園のお迎えなど日常的な育児と仕事の両立がしやすくなります。
育児休業取得状況の公表義務の拡大
対象企業の範囲
改正前は従業員1,000人超の企業のみに課されていた育児休業取得状況の公表義務が、従業員300人超の企業にまで拡大されました(改正育児・介護休業法第22条の2)。
| 項目 | 改正前 | 改正後(2026年4月〜) |
|---|---|---|
| 公表義務の対象 | 常時雇用する労働者が1,000人超の事業主 | 常時雇用する労働者が300人超の事業主 |
| 公表内容 | 男性の育児休業等取得率 | 変更なし |
| 公表方法 | インターネット等による一般公表 | 変更なし |
対象企業は年1回、男性の育児休業取得率(または育児目的休暇を含む取得率)を公表しなければなりません。公表しない場合は厚生労働大臣による勧告の対象となり、勧告に従わない場合は企業名の公表が行われる可能性があります。
介護離職防止のための新たな義務
個別周知・意向確認義務
介護離職が社会問題化する中、改正法は事業主に対して、労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た場合に、以下の義務を課しています。
- 介護休業制度等に関する個別の周知(書面交付等による)
- 介護休業の取得に関する意向の確認
- 介護に直面する前の早い段階での情報提供(40歳到達時等)
テレワーク措置の努力義務
介護を行う労働者に対するテレワークの導入が努力義務として規定されました。法的な強制力はありませんが、介護離職防止策として積極的な導入が推奨されています。
企業の実務対応チェックリスト
今回の改正に対応するため、企業は以下の対応が必要です。
- [ ] 就業規則・育児介護休業規程の改定(看護等休暇の対象年齢・取得事由の変更反映)
- [ ] 柔軟な働き方措置の選定(2つ以上)と労働者代表への意見聴取
- [ ] 個別周知・意向確認のための書式整備(育児・介護の両方)
- [ ] 残業免除の対象拡大に伴う勤怠システムの設定変更
- [ ] 育児休業取得状況の公表体制整備(300人超企業)
- [ ] 管理職向けの研修実施(制度内容と運用方法の周知)
まとめ
2026年4月施行の育児・介護休業法改正は、子育て・介護と仕事の両立を支援する制度をさらに拡充するものです。特に「柔軟な働き方措置」の義務化は、従来の育児短時間勤務制度(3歳未満対象)ではカバーしきれなかった就学前の子を持つ労働者への支援を大きく前進させます。企業は早急に規程整備と運用体制の構築を進めることが重要です。
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*法律のミカタ編集部 | 2026年4月26日公開*