企業法務の全記事を見る最終更新: 2026-03-24

国際取引の契約書ガイド|準拠法・紛争解決・英文契約の基本

この記事のポイント

  • 準拠法の合意がなければ「最も密接な関係がある地の法」が適用される
  • 国際取引の紛争解決は仲裁合意が一般的
  • 英文契約書には日本法にない独特の条項(Representations、Indemnification等)がある
  • CISGの適用排除を明示するか否かの検討も重要

国際取引と契約書

海外企業との取引では、言語、法制度、商慣習が異なるため、契約書の重要性が国内取引以上に高まります。特に準拠法紛争解決方法契約の解釈ルールについて、当事者間で明確に合意しておく必要があります。

準拠法(Governing Law)

準拠法とは

契約の解釈や効力について、どの国の法律を適用するかを定めるものです。国際取引では当事者の所在国が異なるため、どちらの法律に従うかが問題になります。

当事者による合意

日本の法の適用に関する通則法(通則法)7条により、当事者は契約の準拠法を自由に選択できます。契約書に明記することで、予測可能性が確保されます。

合意がない場合

準拠法の合意がなければ、最も密接な関係がある地の法が適用されます(通則法8条)。具体的には、特徴的な給付を行う当事者の常居所地法が推定されます。

選択のポイント

  • 自国法を準拠法とすれば法的リスクの予測が容易
  • 相手国法の場合、現地弁護士の助言が必要
  • 第三国法(例:英国法、シンガポール法)を選択する場合もある
  • CISG(国際物品売買契約に関する国際連合条約)の適用可否も検討

CISGについて

日本はCISG(ウィーン売買条約)の締約国です。当事者双方がCISG締約国に所在する場合、物品売買契約にはCISGが自動的に適用されます(CISG第1条)

CISGの適用を望まない場合は、契約書に明示的な排除条項を入れる必要があります。

紛争解決条項

裁判管轄(Jurisdiction)

どの国の裁判所で紛争を解決するかを定めます。

  • 専属的管轄合意: 特定の裁判所のみに管轄を認める
  • 非専属的管轄合意: 特定の裁判所に管轄を認めつつ、他の裁判所での提訴も妨げない

注意点: - 外国判決の執行は、相手国との間に相互保証がなければ困難(民事訴訟法118条) - 米国やフランスとの間には実務上相互保証が認められているが、中国との間では議論がある

仲裁(Arbitration)

国際取引では、裁判よりも仲裁が紛争解決手段として広く利用されています。

仲裁のメリット: - ニューヨーク条約(外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約)により、170ヶ国以上で仲裁判断の執行が可能 - 非公開(企業秘密の保護) - 専門家を仲裁人に選任できる - 一審制で解決(上訴不可)

主な仲裁機関: - ICC(国際商業会議所): パリ - SIAC(シンガポール国際仲裁センター) - JCAA(日本商事仲裁協会): 東京 - HKIAC(香港国際仲裁センター)

仲裁条項の記載例: 「本契約に起因または関連するすべての紛争は、JCAAの商事仲裁規則に基づき、東京において仲裁により最終的に解決されるものとする。」

英文契約書の基本構造

前文(Recitals / Whereas Clauses)

契約締結の背景・目的を記載します。法的拘束力はないとされることが多いですが、契約解釈の際の参考にされます。

定義条項(Definitions)

契約で使用する重要な用語の定義を列挙します。英文契約では冒頭に詳細な定義条項を置くのが一般的です。

本体条項

#### Representations and Warranties(表明保証) 当事者が一定の事実が真実であることを表明し、保証する条項です。日本法には直接対応する概念がなく、英米法特有のものです。

違反があった場合はIndemnification(補償)や契約解除の根拠になります。

#### Indemnification(補償) 一方当事者が他方に損害を与えた場合、その損害を補填する義務を定めます。日本法の損害賠償(民法415条・709条)とは異なり、第三者からのクレームに対する防御費用なども含むのが特徴です。

#### Limitation of Liability(責任制限) 損害賠償の上限額や、間接損害・逸失利益の免責を定めます。

#### Force Majeure(不可抗力) 天災、戦争、疫病等の不可抗力事由が発生した場合の免責を定めます。COVID-19以降、この条項の重要性が増しています。

#### Term and Termination(契約期間・解除) 契約の有効期間、更新条件、中途解約の事由・手続きを定めます。

#### Confidentiality(秘密保持) 取引に関連して開示される秘密情報の取り扱いを定めます。

#### Entire Agreement(完全合意条項) 本契約書が当事者間の合意のすべてであり、従前の合意や了解を排除するものです。英米法のparol evidence rule(口頭証拠排除法則)を契約で明確化するものです。

一般条項(General Provisions / Boilerplate)

  • Governing Law: 準拠法
  • Dispute Resolution: 紛争解決
  • Assignment: 譲渡制限
  • Notices: 通知方法
  • Severability: 一部無効の場合の効力
  • Waiver: 権利放棄
  • Amendment: 変更手続き

実務上の注意点

言語条項

日本語版と英語版の両方を作成する場合、どちらを正本とするか(または同等とするか)を明記します。

通貨条項

支払通貨を明記し、為替レートの算定基準日も定めておくことが望ましいです。

印紙税

日本で締結される契約書は印紙税法の対象となる場合があります。海外で締結された契約書は日本の印紙税の対象外です。

まとめ

国際取引の契約書では、準拠法紛争解決条項の二つが最も重要な基盤となります。特に仲裁合意はニューヨーク条約による執行可能性から国際取引のスタンダードです。英文契約書特有の条項(表明保証、補償等)の理解も不可欠です。

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※ 本記事は法律の一般的な知識を提供するものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な法的問題については、弁護士にご相談ください。

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