夫婦の一方が外国籍でも、一方が日本に住む日本人であれば、離婚には日本法が適用されます(法の適用に関する通則法27条ただし書)。日本法なら、協議・調停・裁判のいずれかで離婚できます。ただし、日本で成立した離婚が相手の国でも認められるかは、その国の法律によります。子どもの親権は2026年4月1日から父母の双方とすることもできるようになり、外国籍の配偶者は離婚の日から14日以内に在留資格の届出が必要です(出入国管理及び難民認定法19条の16第3号)。
こんな場面で問題になります
- 日本人の夫と外国籍の妻が東京で暮らしていて、離婚の話し合いを始めた。
- 外国籍の配偶者が母国に帰ってしまい、連絡はつくが日本に戻ってこない。
- 日本で離婚届を出せば終わるのか、相手の国でも手続が必要なのか分からない。
- 子どもを連れて日本に帰国したい、または相手が子どもを連れて出国しそうで心配だ。
- 「日本人の配偶者等」の在留資格で暮らしていて、離婚後も日本に住み続けたい。
まず、どの国の法律で離婚するのか(準拠法)
一方が日本に住む日本人なら、日本法
国際離婚では、最初に「どの国の法律で離婚するか」(準拠法)を確かめます。夫婦の一方が、日本に常居所(ふだん生活の本拠としている場所)がある日本人であれば、離婚は日本法によります(法の適用に関する通則法27条ただし書。以下「通則法」)。
例えば、東京に住む日本人と外国籍の配偶者の夫婦なら、相手の国籍にかかわらず日本法で離婚することになります。
それ以外の場合は、三段階で決まる
上の場合にあたらないときは、次の順番で決まります(通則法27条本文・25条)。
- 夫婦の本国法(国籍のある国の法律)が同じなら、その法律
- 本国法が違っても、夫婦の常居所地法が同じなら、その法律
- どちらもなければ、夫婦に最も密接な関係がある地の法律
例えば、日本人とフランス人の夫婦がそろってパリで暮らしているなら、本国法は違いますが、常居所地はともにフランスです。この場合はフランス法が準拠法になります。日本の裁判所で手続をするときでも、外国法を当てはめて判断することになります。
二重国籍の人の「本国法」
当事者が二つ以上の国籍を持つ場合、そのうち一つが日本国籍なら、日本法がその人の本国法になります(通則法38条1項ただし書)。日本国籍がないときは、常居所のある国籍国、なければ最も密接な関係がある国籍国の法律です(同項本文)。
なお、外国法を適用した結果が日本の公の秩序や善良の風俗に反するときは、その規定は適用されません(通則法42条)。
日本の裁判所で手続ができるか(国際裁判管轄)
離婚の訴えを日本で起こせる場合
準拠法とは別に、そもそも日本の裁判所で扱えるかという問題があります(国際裁判管轄)。2019年4月1日に施行された改正で、人事訴訟法に定めが置かれました。離婚の訴えは、例えば次の場合に日本の裁判所に起こせます(人事訴訟法3条の2)。
- 訴えられる側(被告)の住所が日本にあるとき(1号)
- 夫婦の双方が日本国籍のとき(5号)
- 日本に住む側からの訴えで、夫婦の最後の共通の住所が日本にあったとき(6号)
- 日本に住む側からの訴えで、相手が行方不明のとき、相手の住む国でされた離婚判決が日本で効力を持たないときなど、日本で審理することが当事者の衡平や適正・迅速な審理につながる特別の事情があるとき(7号)
一方で、日本の裁判所に管轄があっても、事案の性質、被告の負担、証拠の所在地、未成年の子の利益などから、日本で審理すると衡平を害する特別の事情があれば、訴えが却下されることがあります(人事訴訟法3条の5)。
まずは家庭裁判所の調停から
日本法の手続では、離婚の訴えを起こす前に、原則として家庭裁判所に調停を申し立てます(家事事件手続法257条1項、調停前置主義)。日本の裁判所が離婚の調停を扱えるのは、離婚の訴えについて管轄があるとき、相手の住所が日本にあるとき、当事者が日本の家庭裁判所で調停をする合意をしたときです(家事事件手続法3条の13第1項)。
相手が海外にいるとき
離婚の調停は、電話のように音声だけでやり取りする方法では成立させることができません。ただし、家庭裁判所と当事者双方が映像と音声で互いの様子を確認しながら話せる方法であれば、成立させることができます(家事事件手続法268条3項)。実際にこの方法が使えるかは、事件を扱う家庭裁判所の判断によります。
日本法で離婚する方法:協議・調停・裁判
協議離婚は届出で成立する
日本法では、夫婦が話し合って合意すれば、離婚できます(民法763条)。協議離婚は、戸籍法の定めに従って届け出ることで効力を生じます(民法764条・739条)。届書には、親権者となる人と、その人が親権を行う子の氏名を書きます(戸籍法76条)。協議離婚の届出には、成年の証人2名の署名が必要です(法務省「離婚届」)。
調停・裁判で離婚する場合
話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所の調停で合意を目指します。調停で合意が成立し調書に記載されると、確定判決と同じ効力を持ちます(家事事件手続法268条1項)。
調停でもまとまらなければ、離婚の訴えを起こします。裁判で離婚が認められるのは、不貞行為、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、その他婚姻を続けがたい重大な事由があるときです(民法770条1項)。裁判で離婚した場合は、裁判が確定した日から10日以内に届け出ます(戸籍法77条1項・63条1項)。
財産分与
離婚した一方は、相手に財産の分与を請求できます(民法768条1項)。話し合いがまとまらなければ家庭裁判所に処分を求められますが、離婚の時から5年を過ぎると請求できません(同条2項)。
日本の協議離婚は、海外でも認められるか
日本の協議離婚は、裁判所を通さず届出だけで成立します。しかし、法務省が外務省に依頼して行った24か国の海外法制調査(2020年4月公表の概要)では、子の有無にかかわらず協議離婚を認めていない国が多いとされています(英国・ドイツ・オーストラリア・スイス・アルゼンチンなど)。
そのため、日本で協議離婚が成立しても、相手の国籍国や住んでいる国で同じように離婚が認められるかは、その国の法律によります。協議離婚にするか、調停や裁判で離婚するかは、相手の国でどの形の離婚が認められるかを確かめてから決めることが大切です。
反対に、外国の裁判所の離婚判決が日本で効力を持つには、外国裁判所の裁判権が認められること、被告に訴訟の開始に必要な送達があったか応訴したこと、内容と手続が日本の公序良俗に反しないこと、相互の保証があることが必要です(民事訴訟法118条)。
子どもの親権:2026年4月1日からのルール
どの国の法律で決まるか
親子の間の法律関係は、子の本国法が父または母の本国法と同じならその法律、そうでなければ子の常居所地法によります(通則法32条)。例えば、子と日本人の親がともに日本国籍なら、親権は日本法で決まります。
離婚後も「父母の双方」を親権者にできる
2024年に成立した民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)が、2026年4月1日に施行されました(法務省)。協議離婚では、父母の協議で双方または一方を親権者と定めます(民法819条1項)。裁判で離婚するときは、裁判所が双方または一方を親権者と定めます(同条2項)。
裁判所は、子の利益のため、父母と子の関係、父と母の関係その他一切の事情を考えて判断します(民法819条7項)。父または母が子に害を及ぼすおそれがあるときや、DVなどのおそれから父母が共同して親権を行うことが難しいときは、一方を親権者と定めなければなりません(同項1号・2号)。
双方が親権者になったとき
親権は父母が共同して行います。ただし、子の利益のため急迫の事情があるときや、日常の監護・教育に関する行為は、一方だけで行えます(民法824条の2第1項・2項)。特定の事項について父母の意見が合わないときは、家庭裁判所が一方だけで決められると定めることができます(同条3項)。
離婚のときは、子の監護をする人、親子の交流、養育費などの必要な事項も協議で定めます。その際は、子の利益を最も優先して考えます(民法766条1項)。日本の裁判所に離婚の訴えの管轄があるときは、親権者の指定や子の監護に関する処分も、あわせて日本の裁判所で扱えます(人事訴訟法3条の4第1項)。
子どもを連れて国境を越えるとき(ハーグ条約)
日本は、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)の締約国です。実施法は2014年4月1日に施行されました(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律。以下「実施法」)。
条約の締約国に住んでいた子が、監護の権利を侵害する形で国外に連れ去られたり、帰国を妨げられたりした場合、元の国(常居所地国)への返還が問題になります。日本の中央当局は外務大臣で、日本への連れ去りについても、日本からの連れ去りについても、返還のための援助を申請できます(実施法3条・4条・11条)。
日本に連れて来られた子については、家庭裁判所に返還を求める申立てができます(実施法26条)。子が16歳未満であることなどの要件を満たせば、裁判所は返還を命じます(実施法27条)。ただし、連れ去りから1年を過ぎて子が新しい環境になじんでいる場合や、返還によって子が耐えがたい状況に置かれる重大な危険がある場合などには、返還を命じないことがあります(実施法28条1項)。事件は東京家庭裁判所または大阪家庭裁判所が扱います(実施法32条)。
もう一方の親の同意なく子どもを連れて国境を越えることは、この手続の対象になり得ます。出国や帰国を考えるときは、先に手続を確認してください。
外国籍の配偶者の在留資格はどうなるか
離婚の日から14日以内に届出
「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「家族滞在」の在留資格(いずれも配偶者の身分・活動に基づくもの)で暮らす中長期在留者は、配偶者と離婚したとき、その日から14日以内に出入国在留管理庁長官に届け出なければなりません(入管法19条の16第3号)。出入国在留管理庁は、電子届出システム、窓口、郵送での届出を案内しています。
配偶者としての活動がなくなった後
日本人の配偶者等や永住者の配偶者等の在留資格の人が、配偶者としての活動を正当な理由なく継続して6か月以上行わないで在留していると、在留資格を取り消されることがあります(入管法22条の4第1項7号)。この場合、法務大臣は、在留資格の変更や永住許可を申請する機会を与えるよう配慮しなければなりません(入管法22条の5)。
離婚後も日本で暮らし続けたいときは、ほかの在留資格への変更の申請を検討します(入管法20条)。変更は、提出した資料から変更を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可されます(同条3項)。
国際・渉外の案件全般については「国際・渉外法務」もご覧ください。
今すぐできること
- 夫婦それぞれの国籍と、ふだん生活している国(常居所)を整理し、どの国の法律で離婚するかを確かめる。
- 相手の住所がどの国にあるか、夫婦が最後に一緒に住んでいた場所がどこかを書き出す。
- 相手の国籍国や住んでいる国で、日本の協議離婚・調停離婚・裁判離婚のどれが認められるかを確認する。
- 子どもの国籍と、離婚後の親権・監護・親子の交流・養育費についての考えをまとめる。
- 外国籍の配偶者は、在留カードの在留資格と在留期間の満了日を確認し、離婚後14日以内の届出に備える。
- 子どもを連れての出国・帰国を考えているときは、行動する前にハーグ条約の手続にあたらないか確認する。
弁護士に相談すべきタイミング
- 相手が海外にいて、日本の裁判所で離婚の手続ができるか分からない。
- 相手の国で日本の協議離婚が認められるか分からず、離婚の方法を決められない。
- 親権者を父母の双方とするか一方とするかで、話し合いがまとまらない。
- 相手が子どもを連れて出国した、または出国しそうだ。
- 離婚後の在留資格をどうするか、早めに見通しを立てたい。
当事務所は、国際結婚の夫婦や海外に住む方の離婚・親権の問題について、日本語と英語でご相談をお受けしています。お問い合わせページからご連絡ください。
FREE CONSULTATION
離婚のご相談は、初回30分無料です
- ・日本・ニューヨーク州の弁護士 阿部祐介が担当します
- ・オンライン(Zoom等)・来所(東京・大手町)どちらも可
- ・日本語・英語のどちらでもご相談いただけます
よくあるご質問
日本人と外国人の夫婦も、日本で協議離婚できますか?
一方が日本に住む日本人であれば日本法が適用されるので、協議離婚の届出ができます(通則法27条ただし書、民法763条・764条)。ただし、その離婚が相手の国でも認められるかは別の問題です。協議離婚の制度がない国も多いため、相手の国の扱いを先に確認してください。
相手が海外に住んでいても、日本の裁判所で離婚できますか?
日本に住む側からの訴えで、夫婦の最後の共通の住所が日本にあった場合などは、日本の裁判所に訴えを起こせます(人事訴訟法3条の2第6号・7号)。相手が行方不明の場合や特別の事情がある場合も同様です。ただし、日本で審理すると衡平を害する特別の事情があれば、訴えが却下されることがあります(同法3条の5)。
2026年4月から、離婚後は共同親権になるのですか?
いいえ。父母の双方を親権者とすることも、一方とすることもできます(民法819条1項・2項)。協議で決まらなければ家庭裁判所が子の利益のために判断し、虐待やDVのおそれがあるときは一方を親権者と定めます(同条5項・7項)。
離婚すると、日本人の配偶者等の在留資格はすぐになくなりますか?
離婚しただけで直ちになくなるわけではありませんが、離婚の日から14日以内の届出が必要です(入管法19条の16第3号)。配偶者としての活動を正当な理由なく6か月以上行わないと、在留資格を取り消されることがあります(入管法22条の4第1項7号)。日本に残るなら、在留資格の変更の申請を検討してください(入管法20条)。
子どもを連れて日本に帰国すると、問題になりますか?
子が住んでいた国がハーグ条約の締約国で、もう一方の親の監護の権利を侵害する連れ去りにあたると、日本の家庭裁判所に子の返還を申し立てられることがあります(実施法26条・27条)。返還を命じない事由もありますが、要件は限られています(実施法28条)。出国する前に確認することが大切です。

