相続

相続

相続の基礎知識から実務まで。法定相続人・法定相続分の確認、遺言書の書き方、遺産分割協議、相続放棄の手続き、相続税の計算方法を解説します。

法定相続人と法定相続分

配偶者は常に相続人で、子・親・兄弟の順に相続権があります。

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相続人の範囲と順位は民法で定められています。

配偶者: 常に相続人(民法890条)

第1順位: 子(民法887条)— 配偶者1/2、子1/2 第2順位: 直系尊属(民法889条1項1号)— 配偶者2/3、親1/3 第3順位: 兄弟姉妹(民法889条1項2号)— 配偶者3/4、兄弟1/4

代襲相続: 子が先に死亡している場合、その子(孫)が代わりに相続します。

遺言書の種類

自筆証書・公正証書・秘密証書の3種類があり、公正証書が最も確実です。

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自筆証書遺言(民法968条): 全文を自筆で書き、日付・氏名を記載して押印。法務局の保管制度も利用可能。

公正証書遺言(民法969条): 公証人が作成。証人2人が必要。最も確実な方法。

秘密証書遺言(民法970条): 内容を秘密にしたまま、存在のみを公証人に証明してもらう方法。実務ではほとんど利用されません。

遺産分割協議

遺言がない場合、相続人全員の合意で遺産の分け方を決めます。

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遺言書がない場合、相続人全員で遺産の分け方を話し合います(民法907条)

全員の合意が必要で、合意内容を遺産分割協議書にまとめ、全員が署名・実印押印します。不動産の相続登記にも必要な書類です。

まとまらない場合は家庭裁判所の調停を利用できます。

相続放棄

相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する手続きです。

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相続放棄は、相続人が相続する権利を放棄する手続きです(民法938条)

期限: 相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述。

放棄すると、その相続に関して初めから相続人でなかったものとみなされます。借金が多い場合に利用されることが多いです。

限定承認(民法922条): プラスの財産の範囲でのみ債務を承継する方法もあります。

相続税の計算

基礎控除を超える部分に10〜55%の累進課税が適用されます。

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基礎控除 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

基礎控除を超える部分に課税されます。税率は10%〜55%の累進課税。

主な軽減措置: - 配偶者の税額軽減: 法定相続分または1億6,000万円まで非課税 - 小規模宅地等の特例: 居住用宅地を80%減額 - 未成年者控除、障害者控除等

申告期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内

遺言執行者

遺言の内容を実現するために選任され、財産管理や分配を行います。

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遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権利・義務を有する者です(民法1012条)

選任方法: (1)遺言者が遺言で指定(民法1006条)、(2)家庭裁判所が利害関係人の請求により選任(民法1010条)。弁護士、信託銀行、相続人自身等が就任することが一般的です。

主な職務: 相続財産の管理、不動産の相続登記、預貯金の解約・分配、遺贈の履行、認知の届出等。遺言執行者は相続人全員の代理人の地位ではなく、遺言の内容を実現する独立した地位にあります(民法1015条)

権限の強化: 2019年の民法改正により、遺言執行者の権限が明確化されました。特に、特定財産に関する遺言の執行について、遺言執行者が単独で対抗要件を備えることが可能になりました(民法1014条2項)

報酬: 遺言で定めがなければ家庭裁判所が定めます(民法1018条)。相場は遺産総額の1〜3%程度です。

遺産分割調停と審判

話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所の調停や審判で解決します。

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遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停・審判を利用して遺産分割を行います。

遺産分割調停(家事事件手続法244条): 調停委員会(裁判官1名+調停委員2名)が間に入り、当事者間の合意形成を支援します。調停はあくまで話し合いの手続きであり、合意が成立しなければ不成立となります。

遺産分割審判: 調停不成立の場合に自動的に審判手続に移行します(家事事件手続法272条4項)。裁判官が法定相続分を基準に、各相続人の具体的な事情(特別受益、寄与分等)を考慮して遺産の分割方法を決定します。

分割方法: (1)現物分割(各相続人に個別の財産を割り当て)、(2)代償分割(ある相続人が財産を取得し、他の相続人に代償金を支払う)、(3)換価分割(財産を売却して代金を分配)、(4)共有分割。

期間: 調停は通常6ヶ月〜1年程度、審判を含めると1〜2年程度かかることもあります。

特別受益(民法903条): 相続人が被相続人から生前に贈与等を受けていた場合、その分を相続分から差し引く制度。持戻し免除の意思表示(民法903条3項)も可能です。

寄与分(民法904条の2): 被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした相続人に、相続分を加算する制度。介護や事業への貢献等が典型例です。

相続登記の義務化

2024年4月から相続不動産の登記が義務化され、3年以内の申請が必要です。

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2024年4月1日から、相続により不動産の所有権を取得した場合の登記が義務化されました(不動産登記法76条の2)。所有者不明土地の問題解消が目的です。

申請期限: 相続の開始および所有権を取得したことを知った日から3年以内。遺産分割協議が成立した場合は、成立日から3年以内。

過料: 正当な理由なく期限内に申請しない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

相続人申告登記: 遺産分割が完了していない場合でも、自己が相続人であることを法務局に申告するだけで義務を履行したとみなされる簡易な制度です(不動産登記法76条の3)

遡及適用: 2024年4月1日より前に発生した相続についても、3年間の猶予期間(2027年3月31日まで)をもって義務化の対象となります。

背景: 全国の所有者不明土地は国土の約24%に達するとされ、公共事業や都市開発の重大な障害となっていました。

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項目条文概要
法定相続人民法887-890条配偶者は常に相続人。子→親→兄弟姉妹の順位
遺言民法960-1027条遺言の方式と効力
相続放棄民法938条3ヶ月以内に家庭裁判所に申述
基礎控除相続税法15条3000万円+600万円×法定相続人の数
遺言執行者民法1012条遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権利義務
遺留分民法1042条兄弟姉妹以外の相続人に保障される最低限の相続分
相続登記義務化不動産登記法76条の2相続による所有権取得の登記義務(2024年4月施行)
特別寄与料民法1050条相続人以外の親族(介護した嫁等)が請求できる特別寄与料

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よくある質問

相続放棄の期限を過ぎてしまったら?
原則として3ヶ月の期限(熟慮期間)を過ぎると相続放棄はできません。ただし、相続財産が全くないと信じ、そう信じたことに相当な理由がある場合は、借金の存在を知った時から3ヶ月以内であれば認められることがあります(最判昭和59年4月27日)。期限に間に合わない場合は、家庭裁判所に期間伸長の申立て(民法915条1項ただし書)も可能です。
遺言書と法定相続分はどちらが優先されますか?
遺言書が優先されます。ただし、兄弟姉妹以外の法定相続人には遺留分(最低限の取り分)が保障されています(民法1042条)。遺留分は、配偶者・子は法定相続分の2分の1、直系尊属のみの場合は法定相続分の3分の1です。遺留分を侵害する遺言があった場合、相続開始と遺留分侵害を知った時から1年以内に遺留分侵害額請求が可能です。
相続税はどのくらいかかりますか?
基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える部分に課税されます。例えば、法定相続人が3人の場合、4,800万円までは非課税です。税率は10%〜55%の累進課税ですが、配偶者の税額軽減(法定相続分または1億6,000万円まで非課税)、小規模宅地等の特例(居住用宅地を最大80%減額)等の軽減措置があり、実際の税負担は大幅に軽減される場合があります。
自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらが良いですか?
確実性では公正証書遺言が優れています。公証人が作成するため形式不備のリスクがなく、原本が公証役場に保管されるため紛失や偽造の心配がありません。費用は財産額に応じて数万円〜十数万円です。自筆証書遺言は費用がかからず手軽ですが、形式不備で無効になるリスクがあります。2020年から法務局の遺言書保管制度が始まり、自筆証書遺言の保管と検認手続きの省略が可能になりました。
相続人が行方不明の場合はどうすれば?
遺産分割協議は相続人全員の合意が必要なため、行方不明者がいると協議ができません。この場合、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任(民法25条)を申し立てるか、失踪宣告(民法30条、7年以上生死不明の場合)の手続きを取ります。不在者財産管理人が家庭裁判所の許可を得て遺産分割協議に参加できます。

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※ 本記事は法律の一般的な知識を提供するものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な法的問題については、弁護士にご相談ください。

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