電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法(平成10年法律第25号、以下「電帳法」)は、国税関係帳簿書類の電子的な保存方法を定める法律です。同法は大きく分けて以下の3つの区分を設けています。
| 区分 | 対象 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 自己が作成した帳簿・書類 | 電帳法4条1項〜3項 |
| スキャナ保存 | 紙で受領した書類のスキャン保存 | 電帳法4条3項 |
| 電子取引データ保存 | 電子的に授受した取引情報 | 電帳法7条 |
このうち、電子取引データ保存(電帳法7条)については、2024年1月1日から完全義務化されており、すべての事業者が対応を求められています。
宥恕措置の終了と完全義務化の経緯
電子取引データの電子保存義務は、令和3年度(2021年)税制改正で導入されましたが、実務上の準備が間に合わない事業者が多かったため、以下のとおり段階的に猶予が設けられました。
| 時期 | 措置内容 |
|---|---|
| 2022年1月〜2023年12月 | 宥恕措置:やむを得ない事情がある場合、紙での保存を容認 |
| 2024年1月〜 | 完全義務化:電子取引データは電子データのまま保存が必須 |
2024年1月以降は、メール添付のPDF請求書、クラウドサービスで授受した領収書、EDIシステムでの取引データなど、電子的に授受したすべての取引情報について、紙に印刷して保存することは認められません。
電子取引データの保存要件
電帳法7条および施行規則4条に基づき、電子取引データの保存には以下の要件を満たす必要があります。
真実性の確保(施行規則4条1項)
以下のいずれかの措置を講じることが求められます。
| 措置 | 内容 |
|---|---|
| タイムスタンプ付与 | 取引情報の授受後、速やかにタイムスタンプを付与(施行規則4条1項2号) |
| 訂正削除履歴の保存 | 訂正・削除の事実および内容を確認できるシステムでの保存(同項3号) |
| 訂正削除の防止に関する事務処理規程 | 正当な理由のない訂正・削除を防止する規程を整備・運用(同項4号) |
中小企業にとっては、事務処理規程の整備(4号)が最もコストを抑えた対応方法とされています。国税庁はひな型をウェブサイトで公開しており、これを自社に合わせて修正することで対応が可能です。
検索要件(施行規則4条1項6号)
保存した電子データについて、以下の項目で検索できる状態にしておく必要があります。
- 取引年月日
- 取引金額
- 取引先名称
ただし、基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者(令和5年度税制改正で1,000万円から引上げ)、または税務職員のダウンロード求めに応じることができる事業者については、検索要件が不要とされています(施行規則4条1項6号括弧書)。
2026年時点での中小企業の対応状況と課題
完全義務化から2年が経過した2026年現在、多くの中小企業で以下の課題が指摘されています。
対応の遅れ
日本商工会議所の調査によれば、2025年時点で中小企業の約3割が「十分な対応ができていない」と回答しています。特に以下の点がハードルとなっています。
- クラウド会計ソフト未導入の企業における手作業でのファイル管理の負担
- 取引先からの紙請求書と電子請求書が混在する場合の二重管理
- タイムスタンプ付与サービスの月額費用(月数千円〜)の負担感
- インボイス制度(適格請求書等保存方式)との同時対応による事務負担の増大
実務上の推奨対応
| 対応方法 | コスト | 適した事業者 |
|---|---|---|
| 事務処理規程 + フォルダ管理 | 無料 | 取引件数が少ない小規模事業者 |
| クラウド会計ソフト | 月額1,000円〜 | 中小企業全般 |
| 文書管理システム | 月額5,000円〜 | 取引量の多い中堅企業 |
違反した場合のリスク
電帳法7条の要件を満たさない場合、以下のリスクがあります。
青色申告の承認取消し
電子取引データの保存要件を満たしていない場合、国税関係帳簿書類の保存が適正に行われていないとして、青色申告の承認が取り消される可能性があります(所得税法150条1項1号、法人税法127条1項1号)。青色申告が取り消されると、欠損金の繰越控除や各種特別控除が利用できなくなり、税負担が大幅に増加します。
仕入税額控除の否認
消費税法上、仕入税額控除の適用には帳簿および請求書等の保存が要件とされています(消費税法30条7項)。電子取引データの保存要件を満たさない場合、仕入税額控除が否認されるリスクもあります。
加算税の加重
令和4年度税制改正により、電子取引データに関連する申告漏れ等があった場合、通常の過少申告加算税・重加算税に加えて10%が加重される措置が設けられています(電帳法8条5項)。
今後の実務対応のポイント
2026年現在、税務調査の現場でも電子取引データの保存状況が確認されるケースが増加しています。特に以下の点に留意が必要です。
- 既存の紙保存分の棚卸し:2024年1月以降に受領した電子取引データが紙のみで保存されていないか再確認
- 事務処理規程の策定・更新:最低限の対応として規程を整備し、社内で周知徹底
- バックアップ体制の構築:電子データの滅失に備えた定期的なバックアップ
- 従業員教育:メール添付の請求書等を削除しないよう社内ルールを徹底
- 税理士との連携:自社の保存方法が要件を満たしているか、定期的に確認
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*法律のミカタ編集部 | 2026年4月26日公開*