企業法務公開: 2026-05-05/更新: 2026-10-26約12分で読めます弁護士監修済

【2026年】生成AIの著作権訴訟と判例|米英の判決と、日本企業がすべき対応(30条の4・依拠性)

この記事のポイント

  • ✓AI学習のための著作物の利用は、享受を目的としない利用として原則許諾なく行える(著作権法30条の4)。ただし、学習データの表現を出力させる目的がある場合や、著作権者の利益を不当に害する場合(同条ただし書)は適用されない
  • ✓生成物を使う段階では、通常の著作権侵害と同じく類似性と依拠性で判断される。文化庁の「考え方」は、AIの学習データに既存の著作物が含まれていれば、利用者がその作品を知らなくても通常は依拠性が推認されるとしている
  • ✓侵害の差止めは故意・過失がなくても請求され得る(著作権法112条)。損害賠償には故意・過失が、刑事罰には故意が必要。AIの開発・提供事業者が責任を問われる場合もある
  • ✓米国では2025年6月、書籍を使った学習をフェアユースと認めた地裁判断が2件あったが、いずれも米国法と個別の証拠に基づく判断で、海賊版の扱いや市場への影響では原告側に余地を残している。英国の判決は、学習が英国で行われた証拠がないとして学習の請求自体が取り下げられた事件だった
  • ✓利用企業は、規約の確認、プロンプトの記録、公開前の類似性チェック、指摘を受けたときの対応手順を整えておくことが実務の基本になる

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日本企業が生成AIを使ったり開発したりするとき、著作権の問題は、海外の訴訟の結果ではなく、まず日本の著作権法で判断されます。AIの学習のための著作物の利用は原則として許諾なく行えますが(著作権法30条の4)、学習データの表現を出力させる目的がある場合や、著作権者の利益を不当に害する場合は例外です。生成物を社外で使う段階では、通常の著作権侵害と同じく「類似性」と「依拠性」で判断され、AIを使った社員が元の作品を知らなくても侵害になり得ます。米国と英国では2025年に判決が続きましたが、いずれも各国の法律と個別の証拠に基づく判断で、日本でそのまま当てはまるものではありません。

こんな場面で問題になります

  • マーケティング部門が画像生成AIで広告のビジュアルを作ったところ、公開前に「有名なイラストに似ている」と指摘された。
  • 自社サービスに、社内外の記事を検索して要約するRAG(検索拡張生成。外部のデータを検索して回答を作る仕組み)を組み込みたいが、記事を取り込んでよいか分からない。
  • 取引先が、特定のイラストレーターの作品だけを集めて追加学習させたモデルを使っていると分かった。
  • 米国の訴訟の報道を見た経営陣から、「当社の生成AIの使い方は大丈夫か」と確認を求められた。

学習の段階:著作権法30条の4が原則

ルール

著作物は、そこに表現された思想や感情を自ら享受し、又は他人に享受させることを目的としない場合には、必要と認められる限度で、どのような方法でも利用できます(著作権法30条の4)。「享受」とは、作品を見たり読んだりして楽しむことです。情報解析(大量の情報から要素を抽出し、比較・分類などの解析をすること)は、その典型として条文に挙げられています(同条2号)。

文化審議会著作権分科会法制度小委員会の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日。以下「考え方」)は、AI学習のための利用は情報解析にあたり、この規定の対象になると整理しています。条文は、営利目的か非営利目的かを区別していません。なお、「考え方」自体に法的な拘束力はなく、最終的な判断は裁判所が行います。

例外1:享受の目的が混ざっている場合

一つの利用に複数の目的があり、その中に一つでも享受の目的が含まれていれば、30条の4は適用されません。「考え方」は、次のような例を挙げています。

  • 学習データの作品をそのまま出力させるために、意図的に「過学習」させる場合。
  • 特定のクリエイターの少量の作品だけで追加学習し、その作品の創作的な表現を出力させることを目的とする場合。
  • RAGのために、記事などの創作的な表現を出力させることを目的としてデータベースを作る場合。

他方で、「作風」や「画風」そのものはアイデアにとどまり、作風が似ているだけでは著作権侵害にはならないとされています。ただし、少量の作品群の場合は、作風を超えて表現まで共通していることがあるため、追加学習の目的によっては例外にあたり得ます。

例外2:著作権者の利益を不当に害する場合

著作物の種類・用途や利用の態様に照らし、著作権者の利益を不当に害する場合も、30条の4は適用されません(同条ただし書)。「考え方」は、著作物の利用市場と衝突するか、将来の潜在的な販路を妨げるかという観点で判断するとしています。

典型例は、情報解析用に整理されて販売されているデータベースを、許諾なく学習用に複製する場合です。robots.txt(クローラーの巡回を制限するウェブサイト上のファイル)やID・パスワードで、AI学習用の収集を制限しているサイトもあります。データベースの作成実績やそのライセンス取引の実績などから、学習用データベースとして提供される予定が推認できる場合、その制限を回避して集めると、ただし書にあたり得るとされています。反対に、権利者が「学習禁止」と表示しただけでは、ただし書にはあたらないと整理されています。

実務での注意点

権利制限の要件を満たしていることは、原則として利用する側が主張・立証する必要があります。文化庁の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(2024年7月31日)は、開発者に対し、学習データの出所、収集の方針、学習方法に関する判断を記録しておくことを勧めています。海賊版を掲載したサイトと知りながら学習データを集めることは、厳に慎むべきとされています。

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RAGと著作権法47条の5

RAGでは、学習とは別に、記事などを検索用のデータベースに取り込む複製が生じます。「考え方」は、データベースの作成が元の作品の創作的な表現を出力することを目的としないなら、30条の4が適用され得るとしています。

回答を作るときに既存の著作物を表示する部分は、電子計算機による情報処理の結果の提供に付随する「軽微利用」として、著作権法47条の5第1項が適用される可能性があります。ただし、表示する量や割合が軽微な範囲を超える場合や、作品の表現そのものを提供することが主な目的の場合は、原則として許諾が必要です。記事を長く引用して要約を返す設計は、この点で注意が必要です。

生成・利用の段階:類似性と依拠性

ルール

AIで作った生成物も、人が作ったものと同じく、既存の著作物との「類似性」と「依拠性」の両方が認められると著作権侵害になります。類似性は、既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感じ取れるかで判断されます(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・平成11年(受)第922号)。依拠性とは、既存の著作物をもとにして作ったことをいいます。

依拠性の3つの場面

「考え方」は、生成AIの場合の依拠性を次のように整理しています。

  • 利用者が既存の作品を知っていて、それに似たものを生成させた場合は、依拠性が認められます。他人の画像を入力して画像を生成する(Image to Image)場合や、作品名・キャラクター名を入力した場合が典型です。
  • 利用者は知らなかったが、AIの学習データにその作品が含まれていた場合は、通常、依拠性が推認されます。ただし、学習した作品の表現が出力されないことが技術的に担保されていると説明できれば、依拠性が否定される余地があります。
  • 利用者も知らず、学習データにも含まれていなかった場合は、偶然の一致として依拠性は認められません。

実務での注意点

生成することと、生成物を使うことは、別々に判断されます。社内で、許諾を得て利用するかどうかを検討する過程での生成は、著作権法30条の3の範囲で許される場合があります。しかし、ウェブサイトへの掲載や配布などの利用は、こうした規定の範囲を外れることが多く、公開前の確認が欠かせません。

侵害と判断されたときの責任

侵害の停止や予防の請求(差止請求)は、故意や過失がなくても認められ得ます(著作権法112条)。損害賠償には故意又は過失が必要で(民法709条)、損害額の推定規定もあります(著作権法114条)。故意の侵害は、10年以下の拘禁刑若しくは1,000万円以下の罰金又はその併科の対象です(著作権法119条1項)。従業者が業務として行えば、法人にも3億円以下の罰金が科され得ます(同法124条1項1号)。

「考え方」は、利用者が元の作品を知らず故意・過失がない場合でも、使用料相当額の不当利得の返還を求められることがあり得るとしています。また、侵害物が高い頻度で生成されるAIや、類似物が生成される蓋然性が高いと認識しながら防止措置を取っていないAIでは、開発・提供事業者も侵害の主体として責任を問われる可能性が高まるとしています。学習済みモデルそのものの廃棄請求は通常認められないものの、学習した作品に似たものを高い確率で生成する状態なら、認められる場合もあり得るとされています。

訴訟では、裁判所が当事者に、侵害の立証に必要な書類の提出を命じることができます(著作権法114条の3)。学習データの開示が争点になることも想定されます。

AIが作ったものに著作権はあるか

AIは法的な人格を持たないため、著作者にはなりません。AIを使って作られたものが著作物かどうかは、人が創作的な寄与をしたかで個別に判断されます。「考え方」は、表現を具体的に示す詳細な指示や、生成物を見て指示を修正しながら試行を重ねることは、著作物と認められる可能性を高めるとしています。単に試行回数が多いことや、長いがアイデアにとどまる指示は、判断に影響しないとされています。生成物の商用利用については「生成AIと著作権|AI生成物の権利と侵害リスク」で詳しく解説しています。

特許の分野では、AIを発明者として記載した国際出願の国内手続を却下した処分について、知的財産高等裁判所が取消請求を退けています(令和7年1月30日判決・令和6年(行コ)第10006号。上告受理申立ては令和8年3月4日に不受理)。

海外の訴訟:判決で確認できること

海外の事件は、その国の法律に基づく判断です。ここでは、裁判所が公表した判決・命令で内容を確認できたものに絞って紹介します。

  • 書籍の著者らとAnthropicの事件(米国カリフォルニア北部地区連邦地裁、No. 24-cv-05417):2025年6月23日の命令は、書籍を使った大規模言語モデルの学習をフェアユース(米国の著作権の例外規定)と認めました。一方、海賊版サイトから集めた書籍で中央ライブラリを作った点は学習用の複製と同じには扱えないとして、事実審理に進めるとしました。
  • 書籍の著者らとMetaの事件(同地裁、No. 23-cv-03417):2025年6月25日の命令は、この事件の証拠の下では、原告13名の書籍を学習に使ったことはフェアユースにあたるとしてMetaの申立てを認めました。ただし裁判所は、学習が適法だという意味ではなく、原告がAIの生成物による市場への悪影響を立証しなかった結果だと明記しています。
  • Thomson ReutersとROSS Intelligenceの事件(米国デラウェア地区連邦地裁、No. 1:20-cv-613):2025年2月11日の意見は、法律情報の要約を使って検索AIを開発した行為について、フェアユースを認めませんでした。裁判所は、対象のAIは生成AIではないと述べています。
  • Getty ImagesとStability AIの事件(英国高等法院、[2025] EWHC 2863 (Ch)):2025年11月4日の判決の前に、学習が英国で行われた証拠がないとして、学習に関する請求は取り下げられていました。判決は、作品を保存も再現もしないAIモデルは「侵害複製物」にあたらないとして二次侵害の請求を退け、商標の請求は透かしの一部の例で認めました。2025年12月16日、二次侵害の点について控訴が許可されています([2025] EWHC 3343 (Ch))。
  • AIを著作者とする登録の事件(米国コロンビア特別区巡回控訴裁判所、No. 23-5233):2025年3月18日、著作権法は人間が著作者であることを求めているとして、登録を拒絶した著作権局の判断を維持しました。連邦最高裁は2026年3月2日に上告を受理しませんでした(No. 25-449)。

ニューヨーク・タイムズがMicrosoftとOpenAIを訴えた事件(米国ニューヨーク南部地区連邦地裁、No. 1:23-cv-11195、2023年12月27日提訴)のように、提訴の記録はあっても結論を確認できていない事件は多くあります。結論の見通しは、この記事では扱いません。

日本企業にとっての意味

英国の事件のように、どの国で学習や提供が行われたかで、適用される法律が変わります。日本で学習したモデルでも、米国・英国・EUの利用者に提供すれば、その国の法律で問題にされる可能性があります。EUのAI規則は、汎用AIモデルの提供者に、EU著作権法を守るための方針の整備と、学習に使った内容の十分に詳しい概要の公表を求めています(規則(EU)2024/1689第53条1項(c)(d)。同規則113条(b)により2025年8月2日から適用)。

今すぐできること

  1. 社内で使っている生成AIサービスを洗い出し、利用規約の入力禁止事項、生成物の権利の扱い、権利侵害時の補償の有無を確認する。
  2. 他人の作品の入力、作品名・キャラクター名を使った指示、特定の作家の作風を名指しした指示について、禁止又は事前承認のルールを決める。
  3. 生成物を社外に出す前に、画像検索や文章検索で既存の作品と似ていないか確認する手順を決める。
  4. プロンプト、使用したサービスとモデル、生成日時、修正の過程を記録して保存する。
  5. 権利者から指摘を受けたときの対応(公開の停止、事実確認、権利者への回答、再発防止)と担当者を決めておく。
  6. 自社でAIを開発・追加学習する場合は、学習データの出所、収集方針、robots.txtへの対応、類似物の生成を防ぐ措置を文書化する。
  7. 海外の利用者にAIサービスを提供する場合は、提供先の国の著作権法とAI規制を確認する。

弁護士に相談すべきタイミング

  • 権利者から、警告書や削除要請、使用料の請求が届いた。
  • 公開予定又は公開済みの生成物が、既存の作品に似ていると社内外から指摘された。
  • 特定の作家や媒体のデータで追加学習やRAG用データベースを作る計画がある。
  • AIベンダーとの契約で、権利侵害の保証・補償条項を交渉する必要がある。
  • 米国・英国・EUの利用者に向けて、生成AIを使ったサービスを始める。

当事務所(弁護士 阿部祐介。日本及びニューヨーク州の弁護士資格)は、生成AIの導入・開発に伴う著作権と契約のご相談を、日本語と英語でお受けしています。お問い合わせページからご連絡ください。

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よくあるご質問

日本では、AIの学習に著作権者の許諾は要らないのですか?

原則として要りません。享受を目的としない情報解析は、許諾なく行えます(著作権法30条の4)。ただし、学習データの表現を出力させる目的の追加学習や、学習用に販売されているデータベースの無断複製などは例外にあたり得ます。

社員が知らずに既存の作品に似た画像を生成し、公開してしまいました。

AIの学習データにその作品が含まれていれば、社員が知らなくても依拠性が推認され、侵害になり得ます。故意・過失がなければ損害賠償や刑事罰の対象にはならないとされていますが、差止めや使用料相当額の返還は求められ得ます。まず公開を止め、生成の記録を保全してください。

特定の作家の「作風」に似せた画像は違法ですか?

作風そのものはアイデアにとどまり、作風が似ているだけでは著作権侵害になりません。ただし、作品の具体的な表現まで感じ取れる生成物は侵害になり得ます。作家名を指定した生成や、その作家の作品だけでの追加学習は、リスクが高い使い方です。

日本で、生成AIの著作権侵害を判断した判決はありますか?

裁判所ウェブサイトの裁判例検索で2026年10月26日に確認した範囲では、生成AIの学習や生成物の著作権侵害を正面から判断した判決は見つかりませんでした。同サイトに掲載されるのは裁判例の一部です。現時点の判断の手がかりは、従来の判例と文化庁の「考え方」です。

AIで作った画像や文章に、当社の著作権は発生しますか?

AIは著作者になりません。人が表現を具体的に指示したり、生成物を見ながら修正を重ねたりして創作的に寄与した部分があれば、著作物と認められる可能性があります。取引先にライセンスする場合は、AIを使ったことと著作物性について説明できるようにしておくことが望まれます。

出典:著作権法・民法(e-Gov法令検索、2026年10月26日時点の条文)、文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日)、文化庁著作権課「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(2024年7月31日)、裁判所ウェブサイト裁判例検索、各国裁判所の判決・命令、EUR-Lex(規則(EU)2024/1689)。

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※ 本記事は法律の一般的な知識を提供するものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な法的問題については、弁護士にご相談ください。

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