デジタル遺品・デジタル相続の新ルール2026|SNS・暗号資産・クラウドはどうなる?
相続最終更新: 2026-05-04約7分で読めます

デジタル遺品・デジタル相続の新ルール2026|SNS・暗号資産・クラウドはどうなる?

この記事のポイント

  • デジタル遺品は法的に「相続財産」と「一身専属的権利」に分かれ、暗号資産は相続対象だがSNSアカウントは多くの場合一身専属
  • 暗号資産はみなし譲渡で相続税評価対象(時価)。秘密鍵を残さず死亡すると事実上凍結される
  • 主要SNSプラットフォーム(Apple/Google/Meta/X)は遺族向けの追悼アカウント・データ取得手続を整備
  • 生前にエンディングノート・パスワードマネージャー・遺言での指示を組み合わせるのが2026年時点の実務的ベストプラクティス
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「デジタル遺品」がますます無視できない財産に

スマートフォン、クラウドストレージ、SNS、暗号資産(仮想通貨)、サブスクリプションサービス。故人がデジタル空間に残した資産・データを「デジタル遺品」と呼びます。2026年の日本では、相続実務でデジタル遺品トラブルが急増しており、相談件数は年間1万件を超えると言われています。

本記事では、デジタル遺品の法的位置づけ、主要サービスの相続対応、生前にできる準備までを弁護士の視点で解説します。

デジタル遺品の法的分類

デジタル遺品は、相続実務上3つに分類されます。

分類相続性
金銭的価値のある資産暗号資産、NFT、有料コンテンツ、ポイント原則として相続対象
一身専属的権利SNSアカウント、メールアカウント、ID原則として相続対象外
データ・コンテンツ写真、動画、文書媒体所有権は相続、データ自体は契約次第

相続される「金銭的価値あるデジタル資産」

民法896条により、「被相続人の財産に属した一切の権利義務」が相続人に承継されます。暗号資産・NFT・電子マネー残高・有料アカウントの利用権などは、原則として相続財産に該当します。

一身専属的権利は相続されない

民法896条但書により、一身専属的権利(その人個人にしか帰属しない権利)は相続の対象外です。多くのSNSアカウント・メールアカウントは利用規約上「譲渡不可・一身専属」とされており、原則として相続できません。

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暗号資産(仮想通貨)の相続実務

国内取引所に預けている場合

ビットフライヤー、コインチェック、GMOコインなどの国内取引所に預けている暗号資産は、相続手続きで取得可能です。

#### 国内取引所での相続手続き(一般的な流れ)

  1. 取引所への連絡(死亡通知)
  2. 相続関係書類の提出(戸籍謄本、遺言書または遺産分割協議書、相続人全員の同意書、印鑑証明書等)
  3. 本人確認書類の提出(相続人の本人確認)
  4. 承継方法の選択(相続人の口座への移管、または日本円換算での払い出し)
  5. 相続税評価額の確定(被相続人死亡日の時価で評価)

自己管理ウォレットの場合 — 秘密鍵が死亡=凍結

ハードウェアウォレット(Ledger、Trezor)やソフトウェアウォレットで自己管理している暗号資産は、秘密鍵(シードフレーズ)がないと永久に取り出せません。被相続人が秘密鍵を残さずに死亡した場合、暗号資産は事実上永久凍結となります。

相続税の課税

暗号資産は相続税法上、「みなし譲渡」として課税対象となります。

項目内容
評価時点被相続人死亡日の時価
評価方法取引所の終値、または取引業者の発行する残高証明書
基礎控除3,000万円 + 600万円 × 法定相続人数

注意: 暗号資産の価格変動が激しいため、相続税申告時点で価格が下落していても、死亡日時点の高値で課税されるリスクがあります。

SNS・クラウドサービスの遺族対応(2026年時点)

主要プラットフォームの遺族対応窓口は、2025〜2026年にかけてほぼ整備が進みました。

Apple ID(故人アカウント)

Apple は「故人アカウント連絡先(Legacy Contact)」機能を提供。生前に最大5人を指定でき、指定された人は死亡証明書とアクセスキーでiCloud内のデータ(写真、文書、メール等)にアクセス可能です。

Google アカウント(無効化管理ツール)

Google は「無効化管理ツール(Inactive Account Manager)」を提供。一定期間(3〜18ヶ月)アクセスがない場合、指定された連絡先にデータの一部または全部を送信、もしくはアカウントを削除する設定が可能です。

Meta(Facebook / Instagram)

  • 追悼アカウント化: アカウントを「追悼」状態に変更し、プロフィールに「追悼」と表示
  • アカウント削除: 親族が証明書類を提出することで削除可能
  • メモリアル(Facebook): 生前に「追悼アカウント管理人(Legacy Contact)」を指定できる

X(旧Twitter)

近親者がアカウント削除を申請可能。遺族向けにアカウント情報を引き渡す制度はなく、削除のみが選択肢となります。

LINE

LINE は遺族向けの特別な手続きを公式には用意していません。トークデータは原則として故人のスマートフォンを直接操作しない限り取得不可です。

サブスクリプションサービスの解約

故人が契約していたサブスクリプション(Netflix、Spotify、Amazon Prime、ジムの月額会員等)は、解約手続きをしない限り課金が続くため要注意です。

解約に必要な書類(一般的)

  1. 死亡診断書または除籍謄本
  2. 相続人の本人確認書類
  3. 解約申請書(各社所定の書式)

クレジットカード会社経由でも一部解約可能ですが、契約者本人とのカード情報マッチが必要なため、直接サービス提供会社への連絡が確実です。

スマホ・PCのパスワード問題

故人のスマートフォン・PCのパスワードが分からないことが、デジタル遺品処理の最大の障壁です。

iPhone のパスコード

Apple はApple IDパスワードさえ判明すれば、iCloud バックアップから一定のデータ復元が可能。ただし、端末ロック解除自体は不可です。

Android のパスコード

Google アカウントのパスワードがあれば、Google フォト、Gmail、Drive のデータ取得は可能。端末ロック解除はメーカーや機種により対応が異なります。

専門業者の活用

デジタル遺品整理業者が増えており、スマホ・PCのデータ取得・整理を有料で代行するサービスがあります(10〜30万円程度)。ただし、業者選定にはセキュリティ面の確認が必要です。

生前にできる準備(2026年時点のベストプラクティス)

エンディングノートの活用

法的拘束力はないものの、保有資産の一覧、ID/パスワード、ログイン手順、各種連絡先をエンディングノートにまとめておくことで、遺族の負担を大きく減らせます。

パスワードマネージャーの活用

1Password、Bitwarden、Apple Passwords などのパスワードマネージャーには、信頼できる人にマスターパスワードを引き継ぐ機能(緊急アクセス、家族プラン等)があります。

遺言書での指示

公正証書遺言や自筆証書遺言で、デジタル資産の承継先・処分方法を明示することが重要です。特に暗号資産は、ウォレットの所在・秘密鍵の保管場所を遺言に記載するか、信頼できる人に伝えておく必要があります。

Legacy Contact の事前指定

Apple ID の「故人アカウント連絡先」、Google の「無効化管理ツール」、Facebook の「追悼アカウント管理人」など、主要プラットフォームの遺族向け機能を生前に設定することが、現実的な備えとなります。

デジタル遺品トラブルの典型例

トラブル解決策
暗号資産の秘密鍵不明解決不可。生前準備が必須
故人の有料サブスクが課金され続けるクレカ会社経由で停止 → サービス会社へ連絡
故人のスマホが開けず思い出の写真が取れないiCloud/Googleアカウントから取得 / デジタル遺品業者に相談
SNSの「故人発見」トラブル各プラットフォームの追悼化・削除申請
オンラインバンキングの口座が分からない通帳・キャッシュカード・取引履歴から推定。全国銀行協会の「相続預金照会」サービス活用

法改正の動向

2026年時点で、デジタル遺品に特化した法律はまだ存在しません。ただし、以下の動きがあります。

  • 総務省: 「デジタル遺品の取扱いに関するガイドライン」(2024年改訂版)
  • 金融庁: 暗号資産取引業者に対し、相続対応窓口の明確化を要請
  • 法務省: デジタル遺言(電子遺言)制度の検討着手(2026年法制審議会)

まとめ

2026年の日本において、デジタル遺品はもはや無視できない相続実務上の論点です。特に暗号資産については、生前準備の有無で遺族が受け取れる金額に数百万円〜数億円の差が生じることもあります。

今すぐできる3つのアクション

  1. 主要アカウント(Apple/Google/Meta)でLegacy Contact を設定
  2. パスワードマネージャーを導入し、緊急アクセス機能を有効化
  3. エンディングノートに保有デジタル資産一覧と取扱い指示を記載

具体的な相続対策やデジタル資産の遺言書記載については、相続に詳しい弁護士へのご相談をお勧めします。

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※ 本記事は法律の一般的な知識を提供するものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な法的問題については、弁護士にご相談ください。

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