【最高裁判決】クマ駆除ハンターが逆転勝訴|猟銃許可取消は「違法」と初判断(2026年3月27日)
最終更新: 2026-04-09

【最高裁判決】クマ駆除ハンターが逆転勝訴|猟銃許可取消は「違法」と初判断(2026年3月27日)

この記事のポイント

  • 最高裁第3小法廷が2026年3月27日、ヒグマ駆除で猟銃許可を取り消された北海道砂川市のハンターの逆転勝訴を確定
  • 有害鳥獣駆除のための発砲の妥当性について最高裁が判断を示したのは初めて
  • 処分は「重きに失する」として裁量権の逸脱・乱用にあたると全員一致で判断
  • 自治体の要請による駆除活動が「住民の生活環境保護に資する重要な活動」と評価された

事件の概要

2026年3月27日、最高裁判所第3小法廷(林道晴裁判長)は、北海道砂川市でヒグマを駆除したハンターの猟銃所持許可取消処分を「違法」とする判決を下しました。裁判官5人全員一致の判断です。有害鳥獣を駆除するために民間人が発砲した行為の妥当性について、最高裁が判断を示したのは初めてであり、全国の駆除活動に大きな影響を与える画期的な判決となりました。

事件の経緯

発砲と駆除

原告の池上治男さん(77歳)は、北海道猟友会砂川支部長であり、非常勤公務員として「鳥獣被害対策実施隊員」の立場にありました。

  • 2018年8月: 砂川市からの要請を受け、池上さんはヒグマ駆除に出動
  • 現場には市職員や警察官が立ち会い
  • ライフル銃を1発発砲してヒグマを駆除
  • 人的被害・建物損壊は一切なし

許可取消処分

  • 2019年4月: 北海道公安委員会が池上さんの猟銃所持許可を取り消し
  • 処分理由は、弾丸が到達するおそれのある建物の方向に向けて発砲したことが、鳥獣保護管理法に違反するというもの
時系列出来事
2018年8月砂川市の要請でヒグマ駆除に出動、ライフル1発発砲
2019年4月北海道公安委員会が猟銃所持許可を取消し
2021年12月一審・札幌地裁が処分を「違法」と判断(ハンター勝訴)
2024年10月二審・札幌高裁が一審を取消し「適法」と判断(ハンター敗訴)
2026年3月27日最高裁が二審を破棄、処分は「違法」と判断(逆転勝訴確定)

各裁判所の判断

一審:札幌地方裁判所(2021年12月)

札幌地裁は、実際に弾丸が建物に当たったり損壊させたりした事実はないことを重視し、処分を違法と判断しました。池上さんの請求を認め、許可取消処分を取り消しました。

二審:札幌高等裁判所(2024年10月)

札幌高裁は、現場が見通しの悪い場所であり、銃弾が跳ね返りやすい状況だったことを重視。弾丸が同僚ハンターに当たる危険性があったと認定し、公安委員会の処分は適法であるとして一審判決を取り消しました。

最高裁:第3小法廷(2026年3月27日)

最高裁は、弾丸が同僚ハンターに当たる危険性があったことは認めつつも、以下の理由から処分を違法と判断しました。

最高裁の判断理由

最高裁は、処分が「重きに失する」として裁量権の逸脱・乱用にあたると結論づけました。その主な理由は以下の通りです。

1. 公益性の高い活動であったこと

池上さんの発砲は、砂川市の要請に基づく駆除活動であり、「周辺住民の生活環境の保護に資する重要な意義を有する活動の一環として行われた」と評価しました。

2. 具体的な被害が発生していないこと

弾丸が建物に到達するおそれや同僚への危険性は認められるものの、実際に人的被害や物的損害は一切発生していません

3. 萎縮効果への懸念

猟銃許可の取消しは、池上さん個人にとって酷であるだけでなく、「隊員の職務遂行を萎縮させるおそれがある」と指摘しました。駆除を担うハンターが処分を恐れて出動をためらえば、地域の安全が損なわれるという懸念です。

判決の社会的影響

ハンター不足問題との関連

この判決は、全国的なハンター不足の問題と密接に関連しています。

  • 全国の狩猟免許保有者は減少傾向にあり、高齢化も進行
  • クマやイノシシなどによる農作物被害・人身被害は増加傾向
  • 自治体の駆除要請に応じたハンターが不利益を被る事態は、担い手離れを加速させる要因

北海道猟友会の対応

二審で敗訴した際、北海道猟友会は「今の状況ではハンターに全責任が押し付けられる」として、自治体からのヒグマ駆除要請を拒否する可能性を示唆していました。今回の最高裁判決により、こうした懸念は一定程度解消されると見られます。

北海道公安委員会の対応

最高裁判決後、北海道公安委員会は池上さんに謝罪したと報じられています。

関連する法律

法律関連条文内容
銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法)第11条猟銃所持許可の取消事由
鳥獣保護管理法第38条の2住居集合地域等での銃猟の制限
鳥獣被害防止特措法第9条鳥獣被害対策実施隊の設置

実務上の注意点

  • 自治体関係者: 駆除要請時の安全管理体制(射線の確認、退避範囲の設定など)を事前に整備し、ハンターに過度な責任が集中しない仕組みを構築することが重要です
  • ハンター: 今回の判決は「どのような発砲でも許容される」という趣旨ではありません。市の要請、公益性、具体的被害の不存在といった要素が総合的に考慮された結果です。安全確認は引き続き不可欠です
  • 一般市民: クマの出没が増加する中、駆除活動を担うハンターの法的立場が一定程度保護されたことは、地域の安全確保にとって重要な意味を持ちます
※ 本記事は法律の一般的な知識を提供するものであり、個別の法律相談に代わるものではありません。具体的な法的問題については、弁護士にご相談ください。

他のホットニュース

法律の悩み、まずは専門家に相談

お近くの弁護士会の法律相談をご利用ください

日弁連 法律相談ガイド